「長期的な現象として、韓国保守政党の退潮が始まったという側面もある」と、朝鮮半島情勢に詳しい静岡県立大学国際関係学部の小針進教授は指摘する。2016年に朴槿恵・元大統領が初めて弾劾によって大統領職を罷免されたことで保守勢力は大きなダメージを受けた。保守勢力にとってそこからの回復が容易ではないことを示したともいえる。そのため、66.2%(前回58.0%)という28年ぶりの投票率の高さだったにもかかわらず、特に首都圏に多い若者層、浮動層からの支持を得られなかった。
議会で圧勝した文在寅政権は、任期終了となる2022年までどう動くか。韓国国内ではその強すぎる権限が問題となっている検察の改革や、左派的な視点による経済・社会福祉政策での効果創出が注目される。特に経済政策では、若者の失業や世代間格差という問題を強く掲げて当選した文大統領だが、任期半分を過ぎた今でも支持されていない。
アメリカ、日本とは難局も予想
一方の外交面では、北朝鮮との関係改善と南北交流・協力事業の推進、アメリカと中国との外交関係の行方が注目される。2018年には3回の南北首脳会談を実現させた文大統領だが、その後、南北関係は膠着状態に陥っている。ただ、2020年1月に在韓米軍の駐留費の問題や文政権の左派的な性向がアメリカ側から批判されており、中国問題と絡めて対米外交もうまく進んでいない。
文政権が日本との関係にはそれほど重きを置いていないのは事実だ。前出の小針教授は「もともと対日政策の優先順位は高いとはいえないので、今回の選挙結果によって、日韓関係への影響がただちにあるわけではない」と指摘する。
2019年から特に対立を深めた日韓関係だが、最大の懸案である元徴用工問題や慰安婦問題などのいわゆる歴史問題などでは、「被害者中心主義は国際社会で合意されている」との原則的な主張を続けそうだ。
元徴用工問題では、韓国の最高裁判決によって、原告の元徴用工側が被告である日本企業の韓国内の資産を差し押さえている状況だ。原告側が補償金を手にするために差し押さえた資産を売却すれば、「国際法違反であり、問題はすでに解決済み」とする日本側と再度、対立を深めることになる。だが、文政権側に現状以上の事態打開策を期待するのは難しいだろう。
さらに韓国側が「破棄中止」しているGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)を継続するかどうか、これと絡めた日本との貿易管理制度の見直しといった問題も火種として残っている。不安定な北朝鮮情勢や中国、同盟国であるアメリカとの関係を含め、今後も文政権は外交面で複雑な連立方程式を解いていくほかない。
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