沢木耕太郎が明かす「情熱で人を動かす方法」

国内旅のエッセイ集「旅のつばくろ」より

沢木耕太郎氏のインタビュワーの原点となった意外な人との逸話を紹介します(写真:makaron*/PIXTA)
「旅のバイブル」の名をほしいままにしている不朽の名作『深夜特急』。その著者、沢木耕太郎が東北を歩いて綴った初の「国内旅エッセイ集」である『旅のつばくろ』が刊行された。その中からエッセイを一篇お届けする。
沢木は1970年、横須賀の街を歩き回って防衛大の若き自衛官たちにインタビューして書いた『防人のブルース』で、ルポライターとしてのデビューを果たした。災害派遣のイメージが強い今でこそ、自衛隊に対しては「良い印象を持っている」という人が90%近くにのぼるが(2018年内閣府調べ)、当時は学校の教員が自衛官の子どもを名指しで立たせ、「悪人」「人殺し」などと、公然といじめたような時代のことである。
沢木は以来50年間、ノンフィクションの可能性を追究しつづけているが、「インタビュー」もノンフィクションのひとつの形式としてこだわり続けてきた。吉永小百合や井上陽水、藤圭子、尾崎豊、羽生善治など、なかなか取材者に話してくれない対象から鋭く本音を引き出してきたが、本篇ではインタビュワーとしての原点となった、意外な人との逸話を明かす(敬称略)。

情熱についてのレッスン

久しぶりに秋田を訪ね、驚いたことがひとつあった。藤田嗣治のコレクションで有名な平野政吉(まさきち)美術館が消えていたことである。いや、消えていたというのは正確ではない。かつて千秋公園にあった建物から、新しく建設された秋田県立美術館にコレクションが「移動」していたのだ。

だが、あの藤田嗣治の大作「秋田の行事」は、平野政吉美術館の建物を離れてどのように展示されているのだろう。気になった私が、すぐ近くにある県立美術館に行ってみると、以前より多少狭くなったような気はするものの、間違いなく壁の一面を使っての堂々たる展示がされていた。

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