地頭力で対応するコロナ後の「未知の未知」 「想定外を想定する」ことができるかどうか

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思考とは純粋に自発的な行為です。「考える」という動詞に枕詞としてよく用いられるのが「自分の頭で」という言葉です。この言葉どおり「考える」ことは他人に強制されるものではありません。そこには何らかの自分なりの動機が必要で、それがいわゆる「気づき」と言われるものであり、思考においては「無知の知」=気づきと言ってよいでしょう。

「知らない」という自覚があれば、新しいことを学ぼうという未知なるものへの関心の源になり、それが知的好奇心になります。知的好奇心があるからつねに思考回路が起動するのです。

無知の知を強く自覚している人と自覚していない「無知の無知」の人では、日常の行動において、例えば以下のような違いが現れます。

・「無知の無知」の人はよく話すが、「無知の知」の人はよく聞く。
・「無知の無知」の人は知れば知るほど自分が賢くなると思い、「無知の知」の人は知れば知るほど自分が愚かに見えてくる。
・「無知の無知」の人は過去の経験を重視するが、「無知の知」の人は過去を踏まえてつねによりよい未来を考える。
・「無知の無知」の人は他人にあれこれ意見するが、「無知の知」の人は中途半端に口を出さない。
・「無知の無知」の人は「自分が正しい」とつねに自信満々だが、「無知の知」の人は「自分は間違えているかもしれない」と自分に疑いを向ける。

ちなみに、2つ目の項目に関連して、「能力の低い人ほど自己評価が高い」という認知バイアスは、「ダニング・クルーガー効果」として知られています。

ラムズフェルドが示した「未知の未知」

「無知」あるいはその対象としての「未知」に関して1つ紹介しておきたいのがアメリカの元国務長官のドナルド・ラムズフェルド氏が2002年2月の記者会見でイラクにおける大量破壊兵器の存在について問われた際に残したことで有名になった以下の言葉です。

その発言の文脈から、発言当時は必ずしも肯定的にはとられなかった言葉ですが、無知や未知について考える際に示唆に富む発言と言えます。

「まず自分が知っていると知っている「既知の既知」(known knowns)がある。そして次に知らないと知っている「既知の未知」(known unknowns)がある。それに加えて知らないことも知らない「未知の未知」(unknown unknowns)というものもある」

「無知の知」との関連で言えば、知の世界を3つに分けて、とくに「未知の未知」という「知らないことすら知らない」領域があることを明示的に示しました。「知らないと知っている=既知の未知」と「知らないことも知らない=未知の未知」の区別を明確にしたところに、ラムズフェルドの言葉の意義があります。

実際に本当に(天文学的に)大きいのは「未知の未知」の領域のはずですが、とかく私たちは「既知の未知」の領域を未知の領域と思いがちです。ところが実際に圧倒的に大きいのが「気づいていないことすら気づいていない」領域です。そのことを認識している人は安易に物事を自分の経験と知識だけに基づいて判断したりしません。これが「無知の知」を実践することになります。

次ページ【HOW】「未知の未知」=「問題発見」の領域
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