JDIが生煮えのまま片付ける「不正会計疑惑」 第三者委員会の報告書は終始あいまいな表現
2018年4月にJDIは、海外機関投資家と日亜化学工業に対する第三者割当増資により約350億円を調達している。2018年3月に白山工場の減損を行う必要があったと認めてしまえば、増資を引き受けた投資家から「追加の巨額損失を隠して増資を行った」として訴訟を受けるリスクがある。
今回の不適切会計を受けた訂正後の2018年3月期の自己資本は713億円。これに対し、2019年3月期に計上した白山工場の減損は752億円だった。2018年3月期の白山工場の減損回避を「不適切」と認定し決算の訂正を行えば、2018年3月期に債務超過となっていた可能性がある。
それでなくても、今回の訂正後の2019年3月期の自己資本は11億円のマイナス(純資産は8億円のプラス)で、東証が定める上場廃止基準(自己資本がマイナス)に触れていたことがわかっている。
過年度訂正によって事後的に債務超過が発覚した場合、それだけを理由に上場廃止や2部降格となることはない。だが、2018年3月期、2019年3月期と過年度に2期連続で債務超過だったとなれば、大きな批判を招くことになる。
事業用資産の減損は将来の事業見通しをどう評価するかで左右されるため、もともと恣意性を排除できない。JDIの場合、1年後(2019年3月期)に減損しているわけで、これをとがめなかったのは第三者委員会の”武士の情け”なのかもしれない。
⑤あいまいなINCJの責任
そして調査報告書中で言及が甘いのがINCJの責任である。実のところ、INCJの関与は批判的なトーンで複数の記載がある。
JDI発足から上場後の一定期間、重要な投資案件・財務案件や経営陣の人事・報酬について、INCJから派遣された社外取締役のM氏が同意しなければ、取締役会に上程することが不可能であり、INCJが実施的な意思決定権限を有していた。(28、125、127ページ)
そして、「INCJは、必ずしも実現が容易とは言い難い目標値(特に営業利益について)を掲げ、JDIの経営陣・幹部らに対して、その達成を求めた。そのため、JDIの経営陣・幹部には、会社の業績を良くしたい、何とかしてINCJの目標値を達成したいという欲求があった」(125ページ)ことが不適切会計を招いた一因とまで言っている。
しかし、キーマンであるM氏(谷山浩一郎氏)に関してはJDIの社外取締役を務めてきたにもかかわらず、メールのフォレンジックのリストに入っていない。調査報告書はINCJの存在を不適切会計の背景の一つと指摘するにとどまっている。
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