JDIが生煮えのまま片付ける「不正会計疑惑」 第三者委員会の報告書は終始あいまいな表現

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③上場前の疑惑が「不存在」なのか

A氏は告発で、2014年3月のJDI上場に関連する不適切な行為も指摘していた。

この点について調査報告書では、上場申請時における実現不可能な事業計画の作成について不適切行為がなかったか検証したうえで、「不存在」と結論づけている。

しかし、その論理構成はいかにも苦しい。「上場申請にあたって、東京証券取引所及び幹事証券会社に提出された事業計画については、その実現可能性に全く疑問なしとはいえないものの、最終的な発行価格の形成に直接影響するものではなかった」(96ページ)。

なぜなら、調査報告書に上場前に示していた業績予想や事業計画について、実現可能性が疑問だらけだった実情が赤裸々に描かれているからだ。

JDIは2014年3月19日に上場している。その直前の2月14日に2014年3月期の業績予想として営業利益304億円を開示していた。この営業利益予想を達成するためには2014年1~3月に83億円の営業利益を稼ぐ必要があった。

ただし、2014年4月7日時点での2014年1~3月の速報値は約5億円の営業損失が見込まれていた。A氏は仕掛品の過大計上や在庫評価減の計上回避、計上済み費用の取り消し、引当金計上の先送りなど総額58億円の不適切会計を行った。この際の指示の一部は西CFO(当時)に共有されている。結局、304億円の予想は達成できず、2014年3月期の営業利益は276億円だった(当時の発表ベース。今回の訂正後は221億円)。

不適切な処理を「誤謬」というレトリック

ここだけを見れば、4月7日以降に不適切会計を行っているので、少なくとも上場後の問題である。

だが、本稿の最初に書いたように2013年3月期の第3四半期と第4四半期に不適切会計があった。ただし、この案件について調査報告書は「誤謬」と結論づけている。

誤謬とした理由は、「A氏は、少なくとも登録免許税及び不動産取得税を固定資産の取得価額に算入することができないとする固定資産管理規則の規定を認識すべきではあったものの、当時、当該規定は社内において周知徹底されておらず、当該規定の内容が認識されないまま」(80ページ)としている。「会計経理実務に関する知識・経験・スキルは社内でも随一」(122ページ)のはずのA氏が知らずに間違えたというのだ。

2014年3月期第3四半期には本来、費用計上すべき消耗品費6100万円を資産計上している。このときA氏はJ氏(西CFO)に「費用計上するのが原則である旨を伝えた上で、〈中略〉かかる資産計上はイレギュラーな処理になるため、会社としての判断を仰ぎたい旨を伝えたところ、J氏は〈中略〉資産計上したいとの方針を示した」(55ページ)。

そして、「上場申請のために東京証券取引所及び幹事証券会社に提出された事業計画の最終版においては、2015年3月期(通期)の営業利益750億円という数値をはじめとする連結業績予想数値が記載されていた」(97ページ

2014年3月期の営業利益304億円という業績予想を出した2月14日時点で1100円としていた発行価格は実現できず、900円に落ち着いた。投資家はJDIの業績予想や事業計画を鵜呑みにしていたわけではない。上場時に発表した業績予想を達成できないケースはJDIに限らずそれほど珍しくはない。しかし、JDIの場合、2013年3月期、2014年3月期第3四半期で不適切会計が認められている。にもかかわらず、4月13日のウェブ会見で菊岡社長は「上場前の不適切会計はない」と言い切っている。

次ページ4つ目は減損回避の疑問
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