JDIが生煮えのまま片付ける「不正会計疑惑」 第三者委員会の報告書は終始あいまいな表現
この調査報告書で会社は幕引きとしたいのだろう。しかし、不適切会計の真相が究明されたとはとても言えないのが実情だ。
経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は4月13日、不適切な会計処理の疑惑についての第三者委員会による調査報告書を公表した。調査のきっかけとなったのは、2019年11月26日に元経理・管理統括部長(A氏)からの通知である。過去に経営陣の指示により、不適切な会計処理を行っていたという内容だった。
実は、A氏は5億7800万円の業務上横領の疑いで2018年12月末にJDIを懲戒解雇となった人物だ。ただ、JDIがこの不祥事を開示したのは2019年11月21日のこと。その5日後にA氏は不正の通知を行ったわけだ。しかし、肝心のA氏はそれ以上真相を語らぬまま、4日後の11月30日に死亡した。自殺だったという。
2019年11月27日にJDIが出したリリースでは、A氏の通知内容について「懲戒解雇処分以降、当社決算について入念な精査を実施しており、適切な会計処理が行われてきたと考えております」としていた。だが、執行役員を含む特別調査委員会で調査したところ、具体的な不正疑惑が明らかになったため、社外委員のみで構成される第三者委員会で精査してきた。その結果が今回の調査報告書だ。
過去6年半分の決算を訂正
調査報告書は、100億円規模の架空在庫の計上や滞留・過剰在庫の評価減の不正な回避、その他費用や損失の先送りや資産化などなど多数の「不適切な会計処理」を指摘している。調査報告書発表と併せて、2014年3月期から2020年3月期第2四半期(4~9月)までの6年半の決算訂正も行った。
4月13日に行われたウェブ会見で菊岡稔社長は、「ステークホルダーの方々に多大なご心配とご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」と頭を下げた。ただ、焦点である経営陣の関与については、「経営陣の関与があろうがなかろうが、こういうことを招いたことが残念」とし、「私自身はいっさい関与していない。関与の認定もされなかった。これを是正していくようにがんばっていきたい」と続投の意欲を示した。
調査報告書は、大まかに12種類の不適切な会計処理が行われていたと認めている。これはあくまで手口の分類であり、件数としては100弱、総額では「誤謬」としたものも含めて約525億円にのぼる。一方、不正に利益をカサ上げした場合、大半は翌四半期か翌々四半期に解消する処理(利益の減額)を行っている。これらを差し引いた純額では122億円となる。
今後、証券取引所がJDIにどういう処分を下すかも注目だ。4月16日にJDIが提出した2014年3月期の訂正有価証券報告書に監査法人の意見表明はなく(意見不表明)、2015年3月期~2017年3月期の訂正有価証券報告書(および訂正各四半期報告書)は限定付適正とした。無条件で適正意見を出すだけの十分な資料が得られなかったことなどが理由だ。JDIの内部管理体制には明確に改善の必要がある。
JDIは、日立製作所と東芝、ソニーの電機大手3社の中小型ディスプレイ事業を、官製ファンドの産業革新機構(現INCJ)の主導で統合して2012年に誕生した日の丸液晶メーカーである。そうした企業がなぜ、発足間もない時期から不適切会計を繰り返すことになったのか。
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