JDIが生煮えのまま片付ける「不正会計疑惑」 第三者委員会の報告書は終始あいまいな表現

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さらにK氏の後、2017年7月~2019年5月にCFOを務めたL氏(大島隆宣氏)は、「CFO就任前から、経理担当者と話をする中で、在庫の架空計上の実施について話を聞いており、CFO就任後、不適切な会計処理を一切やめるべきとして、架空計上分を早く縮小しようと提案した」(38ページ)とある。つまり、不適切会計の疑惑は、経営陣も含めて認識していた。大島氏は解消を試みたようだが、公表はされなかった。

CEOでは大塚氏に伝えられていたことは前述した。2015年6月から2017年6月までCEOを務めたC氏(本間充会長)も不適切会計への指示とも取れる行為を行っている。

四半期末の数日前に予想達成を要求

CEOに就任した本間氏は、四半期ごとの業績予想を公表して、その達成を社内に厳しく要求していた。もちろん要求だけなら不適切会計の指示にはならない。だが、四半期末の数日前に業績予想に対して営業利益が100億円近く未達だった。その状況で予想の達成を厳しく要求しているのだから、不正の示唆ではないのか。

JDIは当時、2016年3月期第3四半期(2015年10~12月期)で130億円の営業利益予想を公表していた。そして2015年12月27日に「C氏は、同四半期における営業利益130億円の達成と、そのために必要な各部門の固定費削減について、各事業部幹部らに指示していた」(125ページ)。

さらに、「2016年1月12日には、A氏は、C 氏との打ち合わせにおいて、当該四半期の業績が悪化することを踏まえても、やはり予想営業利益の 130億円は達成したいとの要望を受けたため、経理・財務部の部下に対し、架空在庫の計上や評価減の調整を指示した」(126ページ)。

では、その結果どうなったか。2016年3月期第3四半期に不適切会計で100億円以上の利益カサ上げ(前期までの不適切な処理を解消するマイナス分を勘案しても88億円)が行われた。対外発表された第3四半期の営業利益は133億円だった。

調査報告書では、こうした本間氏の行為について、「C氏からA氏に対して、不適切会計処理に関する具体的な指示はなかったものの、予想営業利益達成についての C 氏からのプレッシャーが、A 氏による不適切会計の動機になったと考えられる」(126ページ)と記す。一見厳しい指摘のようだが、「具体的な指示はなかった」と認定しているところが、結論においてもポイントになる。

調査報告書には、本間氏が不適切な会計処理を指示していないことの傍証としてこんな記載がある。2017年3月期第1四半期(2016年4~6月)のことだ。この四半期の予想営業利益10億円に対して、34億円の営業損失が見込まれていた。

「A氏は、C氏に対して、固定資産の耐用年数を操作して益出しする提案を行ったが、C 氏は、会計ルールに反するものとしてこれを叱責した。C 氏は、不適切会計処理を自分にさせるのかと思い厳しいメールを送ったと証言している」(102ページ)。

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