JDIが生煮えのまま片付ける「不正会計疑惑」 第三者委員会の報告書は終始あいまいな表現

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上場前の数値操作が問題なのは、これが上場時の発行価格に影響を与えた可能性があるからだ。もともとJDIの上場は、経産省の威光をバックにしたINCJ(旧・産業革新機構)が無理強いした結果、公開価格900円を一度も上回ることなく低迷する株価(現在は40円台)に「官製詐欺」という批判がなされてきた。

にもかかわらず、調査報告書はこう結論づける。

「前記のような予想営業利益の数値は、想定発行価格(1100円)を算定する上での参考数値のひとつに過ぎず、最終的な発行価格〈900円〉の形成に直接影響するものではなかったと考えられる」(97ページ)。

上場前の不適切会計を認めながら、「上場申請時等における実現不可能な事業計画の作成(不存在)」(96ページ)とする。結論は会社への忖度がうかがわれる調査報告書だが、図らずも不正を生んだ背景は明確に説明している。

「当該事業計画は、上場準備において事業価値の算定に用いられ、有価証券届出書に記載される想定発行価格に影響を与え得る。そのため、より多くの資金を調達する観点からは、JDIとして、想定される事業計画のパターンのうちより高い数値を用いるインセンティブがあったことが窺われる。加えて、当該事業計画についての財務委員会による承認過程において、INCJから、特に営業利益について高い目標値を設定するよう要請されていた」(97ページ

④巨額減損の必要性なしとの判断

さらに調査報告書の結論に無理があるのは、白山工場における2018年3月期の第4四半期(2018年1~3月)の減損回避だ。

「2018年3月期第4四半期において、白山工場の減損損失の計上回避を企図して、減損会計処理に用いる判定用資料(以下「減損判定資料」という。)の数字を操作し、本件会計監査人に対して事実と異なる説明を行った」(70ページ

具体的には、2018年3月期の減損を前提に翌期以降の減価償却額を減らし、今後の利益計画をよくしたうえで”2018年3月期の減損を行わない”という詐術的な手法や、実現可能性の乏しい技術開発や巨額投資を前提にした計画で監査法人を説得したことを説明している(73ページ)。

2018年3月期第4四半期における白山工場の減損回避について、「2018年8月にA氏が当時の上司へ送ったメールの中に「前期の減損を回避した処理も会計的には正しくありません」との記載が存在したこと、及び本件特別調査委員会による調査過程において、2018年3月期第4四半期に白山工場は本来減損するべきであったと供述した者がいた」(72ページ)とまで書いている。

しかし、結論はこうだ。

「仮に減損判定資料の操作等がなかったとしても、2018年3月期第4四半期の白山工場については、その後の損益見込み等を踏まえ、減損の兆候を明確に認識するには至らなかったことから、結論として不適切な会計処理は認められなかった」(70ページ

当時の状況を振り返ると、2018年3月期第4四半期での白山工場の減損回避を不適切と認定されるとJDIには非常に不都合だということがわかる。

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