マレーシア「日本を追い抜いた」感染抑制の成果 国境封鎖に加え地域ごとの厳格な管理を徹底

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ちなみに、マレーシアのコンドミニアムには、ジムやプールなどの共用施設が備わっているものが多いが、そうした施設もすべて閉鎖され、コンドミニアムの敷地内でのジョギングさえも禁止されている。スーパーマーケットでも入店前には客1人1人に対して体温検査が義務付けられており、37.6℃以上の場合は入店を拒否される。レジの前もソーシャル・ディスタンスを保つために1メートル以上の間隔を置いてテープが床に貼られており、これらを守れていない店舗については、巡回している警察から厳重な注意を受けることとなる。

外食禁止でテイクアウトか宅配のみ

さらに、マレーシア政府は、東南アジア版ウーバーイーツとも言える飲食宅配代行サービスのグラブフードやフードパンダなどのオンラインサービスを積極的に利用するよう、国民に呼びかけている。首相自ら、外食はしばらく我慢してデリバリーサービスを頼もう、と緊急会見で訴えており、今やいっさいの外食は禁止されてレストランはテイクアウトか宅配注文のみ受け付けている。

フードパンダでは「コンタクトレス・デリバリー」と銘打ったサービスを開始。バイクのドライバーと注文した客が、受け取り時に接触することがないよう“最大限の安全”を確保するため、客に自宅の外に受け取り場所を設けてもらい、ドライバーが配達したことをスマートフォンのアプリを通じて連絡する、という仕組みをスタートさせている。オンラインで支払いまですべて完了できるシステムのため可能となる。

これも、政府から指示されている、最低でも1メートルの「ソーシャル・ディスタンス」を守るための対策であり、各バイクのドライバーは配達ごとに手洗い、消毒を徹底するよう会社から指示されているという。

飲食宅配代行大手foodpandaはいち早く「コンタクトレス・デリバリー」を開始した(写真:foodpanda フェイスブックページより)

ムヒディン首相は、国民に向けてこう強く宣言した。

「国民の皆さんが、未来に向けて私たちの日常生活において実践しなければならない“新たなノーマル”の意味をきちんと理解してくれると信じています。かつて、握手は“ノーマル”な習慣でした。しかし、今は違うのです。ウイルスに感染することをまず避けるため、握手は出来ません。尊敬の念を込めてお辞儀をしましょう、これが新しい“ノーマル”です」

アジア初の事実上のロックダウンに踏み切ったマレーシア、その効果が今後続くかどうか。今の日本にとっては大いに参考になる事例といえよう。

海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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