格安のガソリンスタンドが消えていく事情 ジョイフル本田が給油事業を出光興産に譲渡

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東燃ゼネラルはもともと製油所設備の過剰度が高く、大量の余剰ガソリンを業転玉として放出してきた経緯がある。それを苦々しく思っていたのが、ほからなぬ、最大手で統合相手となったJ X。2017年の2社統合後、旧東燃ゼネラルの余剰ガソリンは旧JX側の販売網に吸収され、業転玉の供給量が大幅に減った。

これで困ったのが、ガソリンスタンドの約2割を占めるプライベートブランド系のスタンドだ。プライベートブランド系の中には元売りとの直接取引を行っているところもあるが、調達するガソリンのほとんどが業転玉だったところも多い。従来のような条件で大量の業転玉を調達できなくなれば、最大の武器である価格競争力を失い、ビジネモデル自体が成立しなくなる。ジョイフル本田にしても、以前のようなガソリンの安売りは採算的に難しくなっていた。

元売り系列に入る動きも

ジョイフル本田に限らず、安価な業転玉によって商売が成立していたガソリンスタンドは厳しい状況に追い込まれている。同じく本業の集客装置としてセルフ式の格安ガソリンスタンドを展開するコストコにおいても、かつてほどの安い価格設定はできなくなっているとされる。さらに規模の小さなプライベートブランド系に至っては、「事業を継続するために看板を付け替えて、元売り系列に入る動きも出ている」(元売り関係者)。

寡占化と需給調整により、元売りの収益は改善傾向にある。2013年度にJXの石油精製事業は775億円の経常赤字、東燃ゼネラルの営業益は黒字ながらわずか17億円だった。その後、国内ガソリン需要は1割近く減ったが、統合してJXTGになってからの全体の業績は営業利益で1687億円(2017年度)、2424億円(2018年度)と収益性はむしろ向上している。JXTGは2020年秋に大阪製油所の石油精製を終了し、さらに原油処理能力を減らす考えだ。

ガソリン需要が細る中で、自らの生き残りのために採算重視の経営へと大きく舵を切った石油元売り各社。寡占化と供給サイドの調整によって、その価格支配力が一段と高まり、かつてのようなプライベートブランド系を中心とするガソリンの安売り風景は姿を消しそうだ。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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