止まらない「東京一極集中」に見る強烈リスク コロナ禍で再認識された一極集中の問題点

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過密都市・東京の生活の厳しさを裏付けるデータを紹介したが、深刻なのは災害発生時にもたらされる大変な被害だ。

いまのコロナ感染拡大ももちろん大災禍。感染拡大、長期化による被害想定さえできない状況だ。4月15日に厚労省クラスター対策班の推計が明らかになったが、「まったく対策を取らなかった場合」という前提条件付きのため、正確な推計値の判断は難しい。

先に紹介した「東京一極集中リスクとその対応について」の資料には、東京一極集中における災害時のリスクとして、中央防災会議がまとめた「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」の内容を、①人口や資産の集中によるリスク、②首都中枢機能への影響としてのリスク、③地域・地盤の脆弱性によるリスクの3つに分類して検証している。

災害時のリスク

主だった被害想定(首都圏全体)をみてみよう。

●膨大な建物被害と人的被害:全壊及び焼失建物棟数(最大)約61万棟、死者数最大約1万6000人~約2万3000人
●帰宅困難者による混乱:帰宅困難者数約640万人~約800万人
●避難所の不足:2週間後の避難者数約720万人(このうち避難所外が約430万人)
●電気、ガス等の利用停止:1週間後の電気供給能力約2800kw(ピーク需要比52%)、1週間後のガス供給停止戸数約125万7000戸
●道路・鉄道の被災による交通混乱:幹線道路の深刻な交通渋滞や長期間の鉄道不通状態継続のおそれ
●企業の本社機能の停滞による全国的な経済活動の低下
●サプライチェーン寸断による全国への生活から経済までの広範囲にわたる影響
●羽田・成田空港の同時被災による海外および国内への航空輸送への影響
●金融中枢機能の混乱:東京証券取引所の一時的な取引停止など
●国際的な信用失墜による海外への企業移転:日本市場からの撤退や海外からの資金調達コストの上昇など
●海抜0m地帯など低地における高潮、津波、洪水による長時間の浸水の影響
(※首都圏での災害による被害額の推計)  
●中央防災会議試算:首都直下地震の被害額推計95.3兆円
●土木学会試算:巨大災害における長期的な経済低迷効果を推計した経済被害推計
・首都直下地震(20年)731兆円
・東京湾巨大高潮(14カ月)46兆円
・東京荒川巨大洪水(14カ月)26兆円

首都直下地震は、政府の地震調査委員会が今後30年以内に70%の確率で起きると予測しているマグニチュード7規模の大地震で、首都圏に甚大な被害をもたらすものとみられる。

上の画像をクリックすると、「コロナショック」が波及する経済・社会・政治の動きを多面的にリポートした記事の一覧にジャンプします

中央防災会議の被害想定には、建物を耐震化して火災対策を徹底すれば人的被害を10分の1に減らせる可能性があるとの指摘もあるが、一極集中のハイリスクそのものは変わりない。

4月16日、政府は緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大を決めた。こんなときに考えたくもないことだが、今回のような感染症拡大時に大地震のような災害が発生したらどうなってしまうのか。

最近、首都圏を含め各地で地震が発生しているだけに、災害リスクを頭の隅に入れておいたほうがいい。収束が見えないコロナショックは、超過密都市・東京のハイリスクを顕在化させた。今は感染拡大を食い止めることが最優先だが、ポストコロナ時代に向けて、一極集中の是正は待ったなしの政策課題である。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログでは、最新の病状などを掲載中。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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