コロワイドが大戸屋に「株主提案」を行う真意 なぜ役員刷新か、野尻社長120分インタビュー

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――「買収するぞ」と強く迫ったのでは?

そんなことはない。われわれは事前に手の内を包み隠さず明かすなど、紳士的に対応してきた。というのも、大戸屋の方々に協力してもらわないと、再建できないと考えているからだ。

そういう意味では、今年2月20日に第3四半期の決算説明を受ける際、コロワイドが考えるM&Aの中身についても説明している。

昨年11月、2020年3月期の第2四半期決算を発表する大戸屋の窪田健一社長(記者撮影)

具体的には、51%の株式取得を目指し、シナジーを出すためにも連結子会社化すること。スキームとしては、大戸屋の再生原資を確保するためTOB(株式公開買い付け)と第三者割当増資のセットとすること。そして、最長で3年間は社長を含め数人の役員を派遣すること、その後は経営を任せることができる人材がいればプロパーの方にお任せすることも検討すること、などだ。

にもかかわらず明確な答えがなかった。3月19日に役員に問いただしたところ、「(コロワイドが)創業家から株式を取得する際に事前承諾を取らなかったことなど、感情的な問題が大きくM&Aは受け入れられない」との返答だった。

「プロキシーファイト(委任状争奪戦)にもつれ込んだらどうしますか」と聞いたら、「勝てますよ、負けたら役員の多くは退任します」との答えだった。これ以上話し合いを続けても合意できないと判断して、株主提案を決意した。

現経営陣は保身を図っている

――株主提案を決定する前の3月23日、大戸屋の株主を対象に、大戸屋がコロワイドグループに入ることに賛成か反対かという2択のアンケートを配布しています。その理由は?アンケートの回答者に食事券を送付する手法にも疑問の声が上がっています。

アンケートは、あくまで大戸屋の株主に聞くという「インナーサークル」を対象にしたものだ。われわれは筆頭株主であり、どういう行動を取るか、そしてそれについてどう思われるかを、他の株主の方々にも聞いておくのが筋だろうと考えた。

食事券については、アンケートの対象がわれわれコロワイドではなく大戸屋の株主さんだから。「お手数かけてすみません」という意味だ。おかげさまで、想定より多い90.8%の株主の方々から賛同を得ることができた。

それより驚いたのは、アンケート送付後の4月1日になって、「TOB及び第三者割当増資に関する正式な条件提示がない」との書面が送られてきたことだ。M&Aについては門前払い同様に拒絶していたにもかかわらず、このタイミングで急に「条件提示がないから」というのはおかしい。現経営陣が保身を図るために時間稼ぎをしているのだと感じた。

われわれはかなり時間をかけて、大戸屋にしっかりと説明してきたつもりだ。しかし、納得できる回答がなかったため、株主提案に至ったということを理解してほしい。

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