大戸屋創業者の息子が宅配事業を始めるワケ きっかけは「店舗経験」と「祖母の存在」だった
ニューヨークでの父との思い出
――大学卒業後、銀行を経て大戸屋に入社されたのはなぜですか。
大学生のときに父(三森久実氏)に「起業してみろよ」と言われた。父も21歳のときに祖父が亡くなって、会社(現在の大戸屋)を継いで、株式会社をつくったという経験をしている。やはり父の中でも経営者、起業家としての経験を私にさせたかったのだろう。けれども、私としては、そのとき、「自分で何をやりたいのか」ということが見つからなかった。
就職活動をして、父と間接的に一緒に仕事ができるような業界、銀行や、食品・飲料メーカーなどを受けた。銀行(三菱UFJ信託銀行)に就職することが決まった後の大学4年の秋、米ニューヨークに父と2人で行ったときに日本食のレストランに入った。そこではごく普通の生姜焼き目当てにニューヨーカーたちが押し寄せていた。店を出て一緒にたばこを吸っているときに「勝てるな」と父はつぶやいた。その姿を見て、本当に格好いいなと思ってしまった。だからそこで、大戸屋に入り、会社を継ぎたいと思い、父にも伝えた。
私にはロサンゼルスで育った異母兄がいるのですが、父は「兄には海外のほうを任せたい。お前は大戸屋ホールディングスのトップを目指してほしい」と言われた。銀行を2年で辞めて大戸屋に就職することにした。
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