隠れコロナ蔓延下で起きるもう1つの医療崩壊 相談・受診の目安に縛られすぎてはいけない

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受診した女性も、12日には平熱に戻った。翌13日には頭痛も治まったという。だが、テレ朝のアナウンサーの例にならえば、これから違った症状が出てくる可能性も否定できない。

その間、自宅待機とはいえ、同居の家族と過ごすことになる。もし陽性ならば、政府や自治体が懸念する、家族クラスターを引き起こすことだって考えられる。その家族が、外出先で感染者を増やす。すでに感染している可能性があっても、その確認すらできないことが、今度はストレスになる。

隠れコロナはすでに市中に蔓延している

安倍晋三首相が緊急事態宣言を発令した翌日の4月8日は、東京都内の感染者が144人とそれまでの最高を記録し、そのさらに翌日から、178人、188人、197人と記録を更新しつづけた。

しかし、これはPCR検査を受けて判明した数であって、発熱があっても検査を受けられずに、感染が確認できない”隠れコロナ”はもっと多数に及んでもおかしくはない。そうした人たちが、感染をさらに広めていく。

はっきり言えば、この状況で感染の拡大を防止することは、できるはずがない。居場所すら確認できない敵とは戦えない。

(画像:在日アメリカ大使館HPより)

4月3日に在日アメリカ大使館が、日本国内での検査体制が完全ではなく、感染の実態把握は困難な状況であるとして、アメリカ国民の速やかな帰国を呼びかけていたことも納得できる。

「感染爆発の重大局面」を3月下旬から叫び続けている小池百合子東京都知事は、安倍首相の緊急事態宣言を受けて、国と折衝の末、具体的な施設と業種を挙げて営業自粛を要請している。それと同時に、都内のホテルを借り上げ、軽症者はそこで隔離して、重症患者の入院施設に余裕を持たせる措置を7日から取りはじめた。

厚生労働省は現在、1日あたり最大1万2000件を実施できるPCR検査数を2万件に増やす方針で、諸外国のようにドライブスルー方式による検査実施も検討している。鳥取や奈良、茨城などでは、既にドライブスルー方式の実施を表明している。東京都医師会もドライブスルーではないにせよ、都内に6カ所のPCR検査を行える拠点の設置を進めているという。

もちろん症状のない人でも、誰でもいいから検査を受ければいい、というつもりはない。せめて発熱の症状がある患者だけでも、優先的に受けられるようにすべきではないか。厚生労働省が示した37.5度以上の発熱が4日以上続いたら感染を疑うとする指針にこだわるのは、国内の感染者がまだ少なかった初期のものだ。

それを、国を挙げてウイルスと戦おうというときに、いまだに検査を積極的に拒む医療現場には、反発を覚える。現状はもはや、そんな段階ではないし、そんなことで感染拡大の誤魔化しがいつまでも利くものでもあるまい。

むしろ、これまでのフェーズを変えるための緊急事態宣言だったはずで、そうでなければ、また対策が後手後手にまわった、と歴史に汚点を残すとも限らない。

いまこそ、医療体制の見直しが急務な時期にある。

青沼 陽一郎 作家・ジャーナリスト

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あおぬま よういちろう / Yoichiro Aonuma

1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。

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