隠れコロナ蔓延下で起きるもう1つの医療崩壊

相談・受診の目安に縛られすぎてはいけない

その現実を伝え知って、私は愕然とした。

医師が最後に伝えた「容態が悪くなるようなら」という言葉は、それは新型コロナウイルスに感染している疑いを含んだもののはずだ。それでもPCR検査は実施しないと決めている。

そうすると、この医師は明確な診断を下せなかったともいえる。仮に、患者が診断書を書いてくれ、と申し出たら、どう対応するのだろう。あとで新型コロナウイルスの感染者とわかったとしても、責任を転嫁している。

これはすでに、医療現場の崩壊ではないのか。

新型コロナウイルスの感染拡大で、緊急事態宣言が7日に発令されてからすでに1週間が過ぎた。いまだにPCR検査は抑制されたままだ。

これまでは、感染が爆発して、重症患者を受け入れるだけの医療設備が追いつけずに処置が遅れ、救える命も救えなくなることの医療崩壊を危惧していた。そのため、PCR検査を積極的に行ってこなかった。

検査で陽性となると、軽症でも入院措置が必要となり、医療機関がいっぱいになることを避けるためだ。加えて、PCR検査には、国内の処理能力に限界があった。検査のできる技術者や、設備が足りないからだ。

だから、検査数を落として、感染者数を誤魔化し、クラスター(感染者集団)をつぶす対策を取って来ていた。

それが、市井の医師が病状の明確な診断を下せず、感染の有無を確認できるPCR検査を意図的に拒み、悪化したら救急車で他へ行け、と苦しむ患者を放逐する姿勢となって表れた。これが本来の医療の在り方だろうか。

テレ朝の富川アナが感染の衝撃

くしくも、この同じ日、テレビ朝日『報道ステーション』のキャスターを務める富川悠太アナウンサーが新型コロナウイルスに感染していたことが判明。12日に発表されている。

同局によると、同アナウンサーは4月3日金曜日と4日土曜日に38度の発熱があったが、その後に平熱に戻り、6日月曜日から出社して番組に出演。7日火曜日には番組本番中に痰が絡み、8日水曜日には少し息が切れるようになる。9日木曜日には階段を上ったり、早歩きすると息苦しさを感じるようになって、10日に入院。肺炎の症状が見られ、11日の土曜日にPCR検査を受けて、感染が確認された。

発熱は、感染が疑われるもっとも有効な症状のはずだ。感染拡大防止を公共の電波を使って呼びかけていた報道の人間が、むしろ共演者やスタッフに感染を拡大させる事態となったことで、非難の的となることはやむをえまい。

しかし、一旦は下がったとはいえ、発熱があった時点でPCR検査が可能であり、これを受けていれば、もっと的確な処置がとれたはずだ。自覚だって違ってくれば、行動の指針も明確になったはずだ。

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