日本の財政が理解できてない人に伝えたい現実 「絶対に安全だと言える根拠は何もない」

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真山:日本の財政赤字問題については、端的に言えば、膨らみ続ける社会保障関係費をどうするかだと思うのですが(3月31日付の対談前半編「日本の財政がわかってない人に教えたい真の姿」)。

真山仁(まやま じん)/1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004年に企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』で衝撃的なデビューを飾る。ほか作品多数(撮影:尾形 文繁)

『オペレーションZ』を書くとき、厚生労働省の方に公的年金への支出を削る話をしたら、「日本人を殺す気ですか」と叱られました。「国民の命を守る」という熱い思いを持ち、責任感の強い彼らには到底受け入れられない話でしょう。しかし、財務省には「国民から預かっている国の財政を守る」という立場がありますね。

社会保障関係費のステークホルダー(企業経営にかかわる利害関係者)として、よく財務省VS厚労省という構図が指摘されますが、真の主役は、実は国民ですよね。

岡本:そうですね。

真山:何を我慢できて何を我慢できないのか、どのような保障が必要で、どこまで国に求めるのか、国民は、社会保障について能動的に考え、ステークホルダーとしての責任を果たすべきです。官庁同士の話に押し込めてしまうのではなく、国民が現状と未来を理解したうえで、ステークホルダーとして振る舞う文化を熟成していく必要があると思います。

役所同士で決める問題ではまったくない

岡本:まったくそのとおりですね。役所同士で「じゃあ、これでいきましょう」と決める問題ではまったくありません。社会保障制度の改革は、国民に一定程度の理解をしてもらわないと進められない話です。

ステークホルダーの国民も一人ひとり、立場によって受けているサービスの状況が違うので、それによって見解が異なり、調整することを難しくするという面はあります。ただ、国民の共通認識として、「自分たちの社会保障を将来の世代の負担でやっているのはどうか」と考えていただくための努力は欠かせません。われわれももっとわかりやすい言葉で丁寧に説明していく必要があります。

真山:自分が病気になったり、介護のお世話になったりしなければ、実感を得にくいのが痛いところです。自分のこととしてどう理解してもらうか。難しい問題だとは思います。

話は変わりますが、多くの人は「アベノミクスは成功し景気がよくなったと言っているのに、なぜ、財政は健全化しないのか」と感じています。なぜなのでしょうか。

岡本:アベノミクスの後、バブル崩壊後に長期間続いたデフレを終わらせる状況になったというのは、非常に大きかったと思います。膨らんできた国債発行をこの何年かで抑え、プライマリーバランス(基礎的財政収支)もまだ赤字が残っていますがある程度まで縮小させてきたのも事実です。

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