日本の財政が理解できてない人に伝えたい現実 「絶対に安全だと言える根拠は何もない」
真山:先ほどお話しした東ヨーロッパの取材で、国の財政が悪くなると、政治家が金をばらまいて国民の機嫌をとるかのようなケースが散見され、唖然としました。たとえば、ハンガリーでは年金を13カ月分払って、1カ月分はボーナスだというのです。そして、その政党が選挙で勝って与党になりました。
日本でも、アベノミクスで景気が上向きになったときこそ、本当なら少し増税して財政を健全化する方向に持っていけたはずなのに、そうはならず、「もっと景気をよくするために、減税しよう」という方向に進んでいるように見えます。現実には、消費税以外では、最近の日本の税制改革はどうなっていますか。
法人税率「下げればいい」というわけではない
岡本:例えば、法人税改革はここ数年行ってきました。グローバル化の中で企業の国際競争力をいかに底上げするかという観点では、対応しなければいけない面はあります。
ただ財政が厳しい中で、法人税率を下げれば下げるだけいい、というわけではありません。基本税率を下げる一方、これまで負担されていなかったところにも収益に応じて負担してもらうという形で「課税ベースの拡大」に取り組んだわけです。結果、税率は下げましたが、全体としては減税になりませんでした。
所得税についても、かつては最高税率をずっと引き下げてきました。逆に昨今は消費増税を行う中で、高額所得の方に少し負担増をお願いする形で所得税改革を進めています。法人税、所得税とも多少の凸凹はありますが、基本的なトレンドとして税収が伸びてきましたから、一定の効果はあったと思っています。
真山:最近のトピックスとして、国際課税原則の見直しや地球温暖化対策に関連する炭素税などもあります。国内要因とは別のグローバルな税の問題ですが、これについてはどうお考えですか。
岡本:現在の国際課税原則は、約100年前にできたものです。これは、海外の企業であっても、国内に支店や工場など恒久的施設を持つところには課税するというルールです。しかし、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表される世界的なデジタル企業などは国内に恒久的施設を持たないまま、大きなマーケットを獲得していますね。消費者がいる市場国では課税できませんから、市場国と納税国の間で、税収がアンバランスではないかという意見が噴出しました。
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