さて、あなたは、何問正解できましたか? ちなみに、この文章の出典はBertrand RussellのThe Conquest of Happiness(1930年刊)です。満州事変が起こったのが1931年。この頃、私の祖母は満州へと渡りました。真珠湾攻撃が1941年ですから、戦前の英文ですね。現在47歳の私が生まれたのが、1967年ですから、私が生まれるよりも37年前に出版された本なのですね。こんな古い文献が使用されるといういうのも、日本の入試問題のオツなところですね。ところで、原文は以下のとおりです。上の入試問題では下線部がリライトまたは削除されています。せっかくなので、原文で楽しみたい方のために掲載しますね。
かなり大胆に、原文を改変してありますね。なぜか、ラッセルの英文をそのまま用いてはいません。このへんの柔軟性が日本人の自由な発想を生むのでしょうね。カレーライスのように、海外のものをどんどん日本風にアレンジしてしまう、日本人の自由奔放さが感じられます。「現代英語風にリライトするのだったら、最初から現代英語使えよ!」というツッコミが聞こえてきそうですが、まあまあ。今回の目的は、英語教育のことを忘れて知的冒険の世界を楽しむことですから、深く考えずに次にいきましょう。
若者よ! 翻訳家を目指せ!
かつて後進国だった日本は、江戸末期から明治・大正の時代に、進んだ欧米の文献を翻訳し、わが国に知識を取り入れました。杉田玄白氏らに始まる、このような翻訳の伝統は、わが国の英語教育の大きな特徴となっています。
さて、21世紀の日本は、世界指折りの文化発信基地、また経済の拠点となりました。ネットワーク技術の進歩により、ビジネスの世界ではスピードが重視されます。実社会では、英語を英語のまま理解したり、発信の道具として使用したりするようになっており、母語を介在させる「翻訳」の技術が、一般のビジネスマンや留学生に必要となることは、ほとんどなくなりました。このように、かつて日本の寺子屋で、先進国に追いつくために行われていた翻訳教育が途絶えていくと、寂しい気持ちになる方も多いでしょう。
しかし、安心してください。実は、国立大学の2次試験の多くは、寺子屋教育の伝統を守ってくれているのです。まさに、江戸・明治の寺子屋へのオマージュ。伝統を重視する日本のサムライたちは入試問題の中に生きているのです。そんな事例をすこし見てみましょう。
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