「超」から「普通」のリスクオフで円高ドル安へ 短期金融市場の変化から為替相場を見通す

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ちなみに金融機関は実態としてドル不足に陥っていたというよりも「これからそうなるのではないか」との恐怖感から自己実現的にドルの確保に走り、その結果としてますますドル調達難と相互不信を招いたのであり、一般の世の中で起きている医療物資や食料などの買いだめとよく似ている。

こうした状況に対し、迅速かつ大規模で使い勝手のよいドル調達スキームを提示する重要性はリーマンショック直後の金融市場が学んだ教訓の一つだ。FRBの一連の対応もあって、ドルを調達する際の上乗せコスト(ベーシスコスト)が足元で大幅に下がったため、あとはLIBORの低下が定着してくれば、金融機関の経営不安などに怯える「超リスクオフ」ともいうべき異常事態はいったん収束したと考えることができる。現状は「超リスクオフ」から「普通のリスクオフ」に移りつつある過程といえる。

リーマンショックの教訓を生かしたFRB

ドル調達難に対してFRBが迅速に動いてきた経緯を簡単に整理しておく。

3月3日、FRBは臨時FOMC(連邦公開市場委員会)を開催して0.5%ポイントの利下げに踏み切り、同16日にも2度目の臨時FOMCを開催してゼロ金利政策への回帰と量的緩和政策(QE)の再稼働を決定、23日の3度目の臨時FOMCで、QEは無制限とした。

主要6中銀によるドル資金供給策の拡充も16日に決定され、市場の緊張緩和という観点からはこれが最も効いた。この決定と共にドルスワップ協定の適用金利も引き下げられ、流動性の供給期間も既存の1週間物に加え3カ月物(84日物)が加わった。さらに、1週間物は週1回だったものが毎日の実施に切り替わっている。ちなみに19日にはこうした措置はブラジル、デンマーク、メキシコ、ノルウェー、ニュージーランド、シンガポール、スウェーデンなど9カ国に広げられた。

こうしたドルスワップ協定の強化を通じてFRB以外の中銀はより好条件でドルを獲得し、これを所管の国内銀行部門に供給することができるようになった。現状では、ユーロも円も対ドルでプレミアムがプラス(すなわちドルが余っている)という状況に改善している。怒涛の政策対応が奏功し、「海外におけるドル調達難」は解消された。これに遅れてLIBORも低下傾向となった。

ドル調達難や相互不信の解消という論点は為替市場を展望するうえでも重要だ。「超リスクオフ」の局面ではドル調達が難しくなることから為替市場でも自国通貨を手放してドルを買おうとする動きが強かったと考えられる。だから、安全通貨といわれる円やスイスフランすら下落し、例えば、3月24日に円が対ドルで111.70円をつける展開が見られた。これはLIBORが騰勢を強めていた時期と重なる。

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