「超」から「普通」のリスクオフで円高ドル安へ 短期金融市場の変化から為替相場を見通す
短期金融市場がようやく落ち着きつつある。3月に急騰して高止まりが続いていたロンドン銀行間取引金利(LIBOR)が下がり始めているのだ。これは為替相場にも影響を及ぼす。
LIBORは銀行同士が資金を貸し借りするときの金利であり世界の短期金利の中心的な指標だ。例えば「LIBOR+〇%」といったように取引相手の信用力を表現する。銀行間の資金貸借につく金利なので、相互不信が高まる局面ではこれが悪い意味で上昇し、金融危機を示唆するシグナルになる。返済に不安がある相手には高い金利で貸すのが当然だからだ。
アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が大幅な利下げに動いたにもかかわらず、なかなかLIBORが下がらなかったのは、金融機関の相互不信が原因だ。高止まりの理由を紐解けば多岐にわたるので本欄では割愛するが、市場不安の象徴としてそのような動きがあったことだけ、留意してもらえればと思う。
金融機関による「ドル買いだめ」が落ち着いた
一方、金融市場では「ドル調達難」も起きていた。ドルが調達できなければ金融機関はさまざまな決済ができず、破綻に追い込まれる取引主体も出てくる。企業部門も外貨不足から輸入に対応できず、貿易取引が滞るので、ひいては実体経済の停滞を招くおそれがある。3月に見られた資産価格の暴落や結果としての相互不信の高まりはドル欲しさに手元資産の売却に走るという市場行動の結果でもあった。
安全通貨といわれていた円が売られたばかりか、米国債や日本国債、ドイツ国債といった安全資産の代表格のような金融資産まで手放されたのは「ドル調達難」が背景にあった。そうした極端な状況下での現象から、もはや「円は安全資産ではなくなった」というのは、枝葉末節にとらわれ、全体を見誤った議論だ。
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