トランプがコロナ抑止へ米国民に求めた"修行" 東京がNYの"二の舞"にならないためには?

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指数関数的な感染拡大をもたらす新型コロナウイルスを、トランプ大統領は宇宙からの「透明な敵(インヴィジブル・エネミー)」と表現。この大敵と戦う人類社会のヒーローとして、医師、看護師、ヘルスケア・ワーカー、軍隊のウイルス担当部隊に対して敬意を表し、絶大なエールを送っている。

この「透明な敵」と医療専門集団のヒーローたちとの戦いについて、SF(サイエンス・フィクション)アクション映画の勧善懲悪のストーリーから連想されるのは、いずれヒーロー側の勝利になる、というものだ。

ただ、そうだとしても、負けそうな悪役が何かのきっかけに巻き返して、ヒーローを苦しめることもある。それを防止するために、ソーシャルディスタンシングの修行の続行が必要になるというわけである。

ワクチン開発だけでは不十分

ファウチ博士は、ウイルスに対抗する新ワクチンの開発が1年半で実現する可能性があると示唆している。トランプ大統領はこれを認めながらも、その実現には非常に慎重なコメントをしている。背景には、医薬品の開発期間に関するウォール街の一般的な常識と関係がある。

ウォ―ル街では、画期的な医薬品開発には長い年月を要するという見方が一般的である。つまり、開発費を投じるよりも、すでに開発された医薬品を所有する企業をM&Aで飲み込むほうがずっと速効性があるのだ。医薬品業界の巨大M&Aの歴史がそれを証明している。

しかも、体力的に不安なシニア層や子ども、さらに母親となる女性や胎児への副作用・後遺症問題は、極めて深刻な課題となりかねない。ファウチ博士の予測どおり、新ワクチン開発が1年半後に実現する可能性もゼロではない。だが、副作用も後遺症もない、画期的かつ理想的なワクチンが生まれるまでには、15年、20年かかっても不思議ではない。

つまり現実問題として、新ワクチンが開発されたあとも、ソーシャルディスタンシングは並行して継続する必要があるわけだ。トランプ大統領は、経済の早期再開に大いに期待しながらも、これまでごく普通の“西洋人のあいさつ”だった「握手」や「ハグ」については、見直すときが来ていると判断している。

「反トランプ」メディアは、せいぜい半年先までしか読まない株式市場と同じように、トランプ大統領は半年先の大統領選以外のことしか考えていない、と揶揄している。しかし、それは早飲み込みというべきものだ。

確かに、株式市場に精通しているトランプ大統領は、短期の勝負に強いことも確かだが、もともと不動産開発のプロの経営者であり、不動産王として何十年も先を読むことで成功してきた。その実績から、長期的視野の持ち主であることも忘れてはいけない。

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