ただし花王が今回増産する消毒液は、新型コロナウイルスへの効果が確認されていない。家庭用の「ビオレu 手指の消毒液」について花王は公式サイトの問い合わせページでも、「新型コロナウイルスへの効果は確認できていない」と説明している。また今回の消毒液の増産による売り上げ見込みに関しても非公表だ。
一方で、花王の直近の業績は2019年12月期決算(国際会計基準)で売上高が1兆5022億円(昨年対比0.4%減)、営業利益は2117億円(同1.9%増)と横ばい程度で推移していた。
化粧品や紙オムツの外国人需要減も懸念
背景にあるのが子供用紙オムツ「メリーズ」の購買減少だ。日本製の子供用紙おむつは、「安心・安全」との評判で、中国現地で高い人気を誇っている。そのため、近年ではソーシャルバイヤーと呼ばれる中国人転売業者がメリーズを日本のドラッグストアなどで爆買い。中国現地のECサイトなどで、日本で購入したメリーズを売りさばいていた。
ところが昨年1月に中国で「中華人民共和国電子商務法」(通称:EC法)が施行。ソーシャルバイヤーは営業許可証の取得や納税義務が課されることとなった。これにより、メリーズは、一昨年後半からソーシャルバイヤーによる購買が激減。さらにはソーシャルバイヤーが在庫をECサイトでたたき売りを始めたことで、正規ルートとの価格差が生じ、現地プラットフォーマーの値下げ圧力にも繋がった。その結果、サニタリーやオーラルケアを含むヒューマンヘルスケア事業の2019年度の売上高は4.7%減の2552億円と、減収で着地した。
2020年度も、コロナウイルスの感染拡大によるインバウンドの減少で子供用紙オムツ、さらには化粧品などの売れ行きも不透明だ。花王は2020年2月時点で、2020年12月期の業績予想を最大で1兆5300億円(対前年比1.8%増)、営業利益を2300億円(同8.6%増)と見込んでいた。
ただし、コロナウイルスの影響で売上高が200億円、営業利益以下も100億円、上記の予想から下振れる可能性もあるともしている。消毒液の増産は好材料だがどれだけ上向く要因かも定かではなく、3月以降、世界経済の動向は激変しており、増収増益を保てるかどうかは予断を許さない。
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