グローバル化の恩恵を享受する人が増えている一方で、アフリカ全人口の約半分が、いまだその日暮らしで、貧しい生活を強いられているのだ。同じ国や地域に住んでいながら、こうした温度差が世界のあちこちで生まれるのは、人間は時に自分が見た事象だけが「真実」だと思ってしまうからかもしれない。
NGO職員としての私の目の前にいるのは、豊かさとは対極にいる人たちだ。私たちには今、「豊かなアフリカ」と向き合っている余裕はとてもない。世界各国の新型コロナウイルスの感染状況を見る限り、これがアフリカで広がった場合、アフリカの国々だけで何とかなるとはとても思えない。
欧米諸国の比ではない悲劇を生む可能性
年の数カ月をタンザニアで過ごし、タンザニアの人々と日常的にコミュニケーションを取っている人間として断言できること――。それは外国からの支援が止まった中で新型コロナウイルスが広まれば、ここでは欧米諸国の比ではない悲劇を生む可能性が否めない、ということだ。
ではどのくらい状況が深刻なのか。
たとえば私の支援拠点があるサキーラ(Sakila)村では、普段から医療のほとんどを海外からの応援に依存している状況がある。この村は、アフリカ最高峰キリマンジェロから約70マイルのところに位置し、近隣の3つの小さな村と合わせた人口は、約1万人程度。地域には、複数のクリスチャン非営利団体による診療所や政府の病院があるが、診療所は薬局のようなもので治療はできないうえ、さまざまな薬が揃っているわけではない。
村から最も近くにある政府運営の病院、Arumeru Medical Centreにも、病気を診断したり、手術ができる医者はおらず、医療品もほとんどない。より精密な診察が必要とされると、首都ダルエスサラームにある国で最も大きなMuhimbili病院にいくように指示されるが、ほとんどの人たちにとってそれは現実的とは言えない。なぜなら、そこは村から560キロ以上も離れているからだ。
東アフリカの多くの村では、多かれ少なかれこうした問題を抱えている。そもそも東アフリカでは、政府が運営する病院以外、ほとんどすべての病院が欧米諸国に拠点があるNGO団体によって運営されているのが現状だ。
私の病院もそれは同様で、アメリカの運営母体の寄付のおかげで現状は薬に困ることなく、誰にでも治療をするポリシーを貫くことが出来ている。しかし今後、新型コロナウイルスが広がれば、そうしたことも十分には出来なくなる可能性が高い。
現地での医者不足を解消するために、通常は母体となる欧米諸国のNGO機関などと調整を図り、医療団を派遣してもらっている。こうした医療団に所属し、ボランティアとしてアフリカに来てくれる医師の多くは、自国では引退した高齢者が多い。
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