マスクや消毒液不足、政府の対策も焼け石に水 医療・介護現場では備蓄も払底、抜本策が急務

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マスクをめぐっては国際規模での争奪戦も起きている(写真:ロイター/ANN WANG)

なぜ、マスクやアルコール消毒液は極度の不足に陥ったのか。マスク専業メーカーである横井定(名古屋市)の広報担当者は、「主力工場があるフィリピンの首都マニラが都市封鎖されたために、従業員の出勤などに支障が生じている。マスクの原材料となるポリプロピレンの価格も10倍以上に高騰しており、調達が困難になっている」という。

医療向けアルコール消毒液最大手のサラヤ(大阪市)では、「1月下旬以降の急激な需要増加に生産が間に合わない状況が続いている」(広報担当者)。同社では製造ラインの増設や操業時間の延長などさまざまな対策を講じているが、「人員確保やボトルなどの部材不足もあって、新たな注文の一部を断らざるをえない状態が続いている」(同担当者)という。

マスクは「通貨をしのぐ存在」に

千葉県松戸市で訪問介護事業を運営するヘルスケアサービスの三木京子社長は、「マスクは国や市からも提供を受けている」という。その一方で、「デイサービス(通所介護)を含め、職員が約200人の利用者に対応するには、いくらあっても足りない。職員はものすごい不安を感じながらケアを続けている」(三木氏)。

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政府はマスクについて、政府自ら調達するなどの取り組みにより「医療現場に優先的に届いている」と説明している。安倍晋三首相は4月7日の緊急事態宣言後にNHKの番組に出演、「4月は(3月実績の約6億枚を上回る)7億枚を生産する。医療機関を優先にするように、メーカーに生産シフトを依頼している」と述べた。日本経団連や経済同友会のトップとの会談では、梶山弘志・経済産業相が産業界にマスクや医療用ガウンなどの増産を要請した。

アルコール消毒液についても、経産省はメーカーに医療現場に優先的に回してほしいと要請している。

マスクについては国際規模での争奪戦も起きており、東京都の小池百合子知事は「マスクが通貨をしのぐ価値を持つ状況になっている」と話す。緊急事態措置発動に伴い、政府によるさらに踏み込んだ対策が急務になっている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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