スノーピーク、「32歳3代目新社長」でどう変わる 「世襲批判」「コロナ」、逆風下での出発

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――2代目から3代目へ社長のバトンが渡され、今後の経営体制はどのように変わるのでしょうか。

会長は、先代が金物問屋からスタートさせた会社をキャンプ用品の会社として発展させ、創業家社長として強力なリーダーシップで「第2創業」を成功に導いた。私の頭の中だけで考え、仕事をするスタイルではなく、役員とのコミュニケーションの中から出てくる新しいアイデアや問題点をみんなで考え、作り上げていく経営スタイルに変えたい。

もちろん、最終的に決断するのは私だが、結果や成果を得るまでの過程を大事にしたい。例えば、私が企画開発全体の責任者となった当初、企画開発部門との関わりは、キャンプの新商品やアパレルデザインの批評、見直し、検証を私が行うことが中心だった。そこで、新たに「未来開発会議」を設け、レビューや通常業務の報告だけではなく、通常の業務では考えることのない未来について意見を出し合うようにした。

社員の「地固め」を進める

役員会や経営会議といったオフィシャルな場以外に、「井戸端会議」のような、役員で議論する場を増やした。そこは報告ではなく、議論をする場にしている。役員全員で考え、解決をしていく中で、未来につながる新しい事業のアイデアが出てくる。その内容をプロジェクトチームに落とし込んで実行に移している。

変えるのは経営陣だけではない。従業員数は500人規模に拡大し、以前より現場の初動が遅くなったり、実行力に欠ける部分が出始めている。今後は社員一人ひとりが自発的に行動できる体制作りが必要だ。副社長時代からもっともエネルギーを注いだのは、社員の「地固め」だ。

2019年は中長期的な成長への基盤固めとして、人材投資を積極的に行った。報酬だけでなく、従業員全員がスノーピークの仕事を自分事にできるよう人材育成に努めた。従業員のモチベーションや使命感を再度、醸成するよう働きかけた。

スノーピークの核となるマインドは、自然や人に対する「愛情の深さ」にあると思っている。自然や顧客、会社の同僚に対する愛情が深ければ深いほど、商品やサービスの品質を高めることができる。企画開発や小売りスタッフ、生産管理など、機能別に分かれ、横の連携が弱かった組織体制も見直した。

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