「土足で他人の領域入る」職場の人への対応策 自己肯定感がなく生きづらい人の働き方改革

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まず、人間関係やルールを見直すうえで、何よりもまず心がけてほしいことがある。それは「自分と他人の間の境界線をきちんと意識し、守ること」だ。世界は、「自分が責任を持って守るべき領域」と「他人が責任を持って守るべき領域」の2つに、大きく分けることができる。

例えば、自分の心(思考)や身体、生活はあなたが責任を持つ領域だし、必要以上に他人を立ち入らせたり、責任やコントロール権を他人に渡したりしてはいけない。しかし、職場では上司や同僚、クライアントとの人間関係、ノルマなどの職場が決めたルールがあなたの生活や心、守るべき領域まで侵害してくるケースは後を絶たない。

「自分の領域が他人によって侵害される」(僕は領域を越えて侵害することを「ラインオーバー」と呼んでいる)ことで、人は心身のバランスを崩すし、生きづらさを感じるようになる。

ラインオーバーの具体的な例

また、他人の要求に逆らえず心の中や生活、人生がその人にとって「よくないもの」「不快なもの」を中心に構成されやすくなる。そして「だから私はダメなんだ」と自分を責め続けるようになってしまう。

ラインオーバーの実例を少し見てみよう。

●過度なノルマの要求や時間の束縛
●上司が勝手に決めたルールや価値観の強要
●キャパを超えて、どんどん仕事を押し付けられる
●こんなことは常識だ、社会人として当然だ、と責める
●「使えない」「才能がない」などという言葉で相手を一方的にジャッジする
●あなたが悪い!と責め、罪悪感を覚えさせようとする

これらは他人の領域に土足で入り込み、自分のルールや価値観で相手をコントロールしようとする行為で、完全なラインオーバーだ。いわゆるブラック企業やパワハラ、クライアントの無茶な要求、仕事で足をひっぱる同僚も、ラインオーバーの1つ。

また、世の職場には「自分だけが得をしたい」「少しでも楽をしたい」「自分より目立つ存在は許せない」「自分は被害者であなたが悪い」といった思いを抱え、あなたのまじめさや善良さ、罪悪感、立場の弱さにつけ込み、利用しようとする人間がいる。

彼らはラインオーバーの常習犯で、隙があれば、あなたを自分のルールや価値観でコントロールしようとしていることも、覚えておいてほしい。

職場でのもやもやする人間関係、環境、ルールがあるなら、まず他人からのラインオーバーに敏感になるのがおすすめだ。自分の快・不快の感覚、相手とのやり取りの後に感じる「もやもやした気持ち」に注目しよう。他人のラインオーバーに敏感になるにつれ、自分が何をされたくないか、いらないものは何かが明確になる。

「いる、いらない」がはっきりすれば、対処も変わってくる。こちらだけが、「いい関係を築くために我慢する」という悪循環からは、少なくとも抜け出せるはずだ。

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