新型コロナの場合、有効性が取りざたされている、富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザ治療薬「アビガン」のような「効くかもしれない」薬が臨床場面で投与されているのは、200万人分を備蓄しているアビガンの使い道がいまのところ他になかったから成立する対策だと思われます。BCGワクチンについて医学的に正しい行動としてはまず有効性を確認すること。その観点でオーストラリアのメルボルンの研究所などが早くもBCGワクチンの有効性を臨床試験によって確認することを表明しています。
ビル・ゲイツ氏が7種類のワクチン工場を建設へ
さて、ここで経済学的にはまた違った解決策が登場します。ビル・ゲイツ氏は自身の財団を通じて新型コロナウイルスへの有効性が期待される7種類のワクチンを製造する工場を建設する計画を4月2日に発表しました。これらの7種類のワクチンの有効性はこれから先の研究で判明することになりますが、今のうちに7つとも量産体制を整えておくというのです。
最終的にはそのうち1~2種類のワクチンが採用されることになるだろうとビル・ゲイツ氏は述べています。そして工場の建設資金のうち数十億ドル(日本円にして数千億円)はおそらくムダになるだろうと語っています。(「ゲイツ財団、新型コロナのワクチン開発支援に数十億ドル拠出へ」2020年4月6日、THE WALL STREET JOURNAL)
彼が表明した7つのワクチンの中にBCGワクチンの日本株が入っているのかどうかはわかりませんが、仮にそれが量産されたとして、後に有効だとわかれば欧米の新型コロナ感染エリアに供給するだけの十分な量が確保できる可能性が生まれるわけです。しかし7つのうち5つはムダになる可能性が高い。これは経済学的に意味があることなのでしょうか。
ビル・ゲイツ氏のアイデアを実行するのはおそらくビル&メリンダ・ゲイツ財団という世界最大の慈善団体になるでしょうから「そこでは採算性を考える必要はない」という考え方もありえます。しかし実はビル・ゲイツ氏はわたしよりもはるかに賢人のようです。
彼が言うのは「仮に数十億ドルの損失がおきても、世界経済が何兆ドルも失われている状況では価値がある」ということです。新型ウイルスとの戦いはおそらく長期戦になる。ビル・ゲイツ氏のワクチン工場計画もワクチン出荷までに18カ月を想定しているそうです。一方で、ウイルスとの戦いは一刻の猶予もない。ゆえに「一刻を稼ぐ計画には、何兆ドルもの価値があるかもしれない」わけで、もしBCGコロナ有効説の可能性が高いと信じるのであれば、ワクチンの生産量増強への先行投資は経済学的には意味があることになるのです。
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