もう1つ思い出されるのは、3連休初日の3月20日に萩生田文部科学大臣による春休み以降の学校再開宣言である。地域ごとに判断する考えを示し、政府が要請した春休みに入るまでの一斉休校を延長しないと萩生田大臣は話している。
これを聞いて、多くの国民が「もう大丈夫なのね」と思い、気が緩んで出かけてしまったのではないか。感染者数が急拡大し始める3月25日より前の話だ。
具体的な経済対策が出てこない理由
安倍首相がこれまで何度も「前例のない対策をやる」と言っている経済対策は、いつになったらできるのだろうか。
皆さんもご存じのように、急速に感染拡大が進むアメリカではもう1週間前の3月27日に2兆2000億ドル(220兆円)の緊急経済対策が成立している。すでに大統領の法案への署名まで、進んでいるのである。
これに対して、日本では、「布マスク2枚」と「前例のない対策」という具体性のない言葉ではあまりに心細い。現金給付、消費税5%に減税する、などの案も出てきているが、各所からこまごまと批判があり、どれが選ばれるのかわからないというのが現状だ。
なぜ、具体的なパッケージがまとまらないのだろうか。
その理由は、霞が関にありがちな「無謬性の追求」だ。富裕層に10万円給付は国民の批判を招くのではないか、消費税をいったん下げたら元に戻せないのではないか、飲食店や宿泊施設が店を閉めたら売り上げの補填をするというのは、彼らだけを優遇することになり平等原則に反するし、他の業界から突き上げがあるのではないか、などが考えられる。
日本を支えている官僚の官僚たるところは、こんな細かな問題を一つひとつ潰し、完璧な案を作りあげることにある。
しかし、事態が深刻化する中でこんなことを言っていたら、どの政策にも何らかのデメリットはあるのだから、何も実行できなくなってしまう。
新型コロナ対策の大きな経済ビジョンが必要なのである。
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