仏「TGVでコロナ患者輸送」、新幹線でも現実味 日本も九州新幹線で救急患者搬送の実例あり
東部の病院から運び出された患者をどの駅で列車に乗せ、西部のどの駅で降ろして病院に向かうかといったルート検討を行い25日に準備完了。26日には2編成のTGVがストラスブールなどの東部の駅から30数人の患者を西部のアンジェやナントなどの駅に運んだ。29日には東部の工業都市ミュルーズなどの駅から西部のボルドーなどに患者を運んだ。4月3日にも運行し、ストラスブールからボルドーへ患者を搬送している。患者搬送が終わった後、帰路につく列車の車内、そして駅やホームは2次感染を避けるため徹底的に消毒される。
SNCFは今回の患者搬送に対して大量のスタッフを動員して対応に当たった。さらに鉄道や医療関係者だけでなく、病院と駅の間は警察が警護を行うなど、全体で見るとかなり大がかりなものだ。
当局の申し入れからわずか3日で実施にこぎつけた素早い行動には舌を巻くが、まったくのぶっつけ本番だったわけではない。昨年5月21日の深夜にはTGVによる患者搬送を含めた実地訓練が行われている。
フランスでは2015年にアムステルダム発パリ行きの国際列車「タリス」の車内で銃乱射事件が起きた。大規模テロで重傷を負った多数の被害者をTGVで搬送することを想定していても不思議はない。今回はその応用編。感染症対策などを加味したうえで、実践に移したというわけだ。
「ドクター新幹線」の可能性
日本でも新幹線を救急輸送に活用するというアイデアがないわけでなない。ドクターイエローならぬ、「ドクター新幹線」である。
札幌医科大学の當瀬規嗣教授は、2015年10月6日付東洋経済オンライン記事(「ドクター新幹線」が人の命を救う日が来る)で、「ドクターヘリは、夜間は使えないのに対して、ドクター新幹線なら少なくとも、深夜、明け方の時間以外は救急搬送が可能になり、選択の幅がひろがる」として、救急輸送への新幹線の積極的な活用を提案している。
特に當瀬教授が勤務する北海道では、将来の札幌延伸時の長万部―新小樽間は高速道路が並走していないことにより、医療体制の充実した都市の病院へ救急輸送に時間がかかる。
そのため、「新幹線の速度優位性が断然重要になるのである。さらに、この区間は北海道でも有数の豪雪地帯であるため、新幹線の定時性が実に効果的となる」(當瀬教授)。
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