堀潤×宇野常寛「何が私たちを分断しているか」 それは世界中で起き、間違って使われている

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宇野常寛氏(右)と筆者
この10年でメディア環境は大きく変化し、SNSを中心に誤った情報や一方的な強い表現が跋扈(ばっこ)するようになっている。「こうあるべきだ」「こうに違いない」という偏った情報により分断が深まり、分断は排除、排斥を加速させ、政治もそれを利用している。暮らしが豊かになるのであれば誰かの人権が制限を受けても構わないという、誤った認識も広まっている。
香港、朝鮮半島、シリア、パレスチナ、スーダン、福島、沖縄——。これらでは、ファクトなき固定観念が人々を分断している。いま、分断の現場では、何か起こっているのか? 分断の細部を、元NHKキャスターでジャーナリストの堀潤氏が書いた『わたしは分断を許さない』に収載されている評論家・宇野常寛氏との対談パートを抜粋、一部修正して掲載する。

現場に行くことが目的化してしまっては意味がない

宇野 常寛(以下、宇野):堀さんは、取材の中で「見てしまったもの」とか「自分ではあらかじめ見たいと思っていなかったもの」、つまりカメラに映したものじゃなくて、結果的に映ってしまったものをすごく引き受けようとしているなと感じました。取材って単に行けばいいというものではないと思う。行くこと自体が大変だというのはあるんだけど現場に行くことが目的化してしまっては意味がない。そこで目に映ってしまったもの、カメラに映ってしまったものをしっかりと検証する知性と勇気、そして発信していく覚悟が大事ですよね。

堀潤(以下、堀):僕自身初めて行って気づくことのほうが大きいんですよね。

どうしても鉤括弧を埋めにいくような取材って、マスコミ時代にたくさんしてきて嫌だなと思っていたし、それがメディアへの不信感にもつながっていたと思うんです。取材された側も、あなたが見たいものを見るためにわざわざ協力したわけじゃないのにという不満もいっぱいあった。

宇野:新聞やテレビの取材を受けるたびに思いますよ。鉤括弧を埋めるためにこういったセリフを聞き出したい、その一言を引き出すために僕に話を聞きに来ることが、新聞記者にしてもテレビの記者にしてもすごく多い。

でも僕は、ジャーナリズムってそういうことではないんだよなあと、僕自身も一発信者として日々感じながら仕事してるんですよ。何で現場に行くかというと、自己破壊のために行くわけじゃないですか。

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