東京の保育園「コロナ」で不安強まる現場の葛藤 23区は江東区以外で「育休延長」を緊急容認

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保育業界に詳しい「保育園を考える親の会」の普光院亜紀氏は、江東区の対応についてこう語る。

「たしかに、4月入園に落選してしまった家庭からは不公平に見えるかもしれません。ただ、都内で感染拡大が深刻化している今、公平性を図っているステージではない。臨時的に必要な措置を取る柔軟性が必要です。家庭が無理をしなくてもよいよう配慮し、感染拡大を少しでも食い止めなくてはいけません。生活を支える保育を守る必要があります」。

保育園の職員には高い負荷がかかっている

現在、保育園の職員は通常よりも高い緊張感と、労働の負荷がかかる中で保育にあたっている。各園は厚生労働省のガイドラインに基づいて、職員の検温や休日に低年齢児が口に入れる可能性のあるおもちゃや遊具を頻繁に消毒するなど、通常以上に感染拡大防止策を徹底している。

だが、「子どもはマスクをつけても不快だと取ってしまう。さらに、職員がマスクで顔を隠すことで、低年齢児は表情がわからず不安がることもある。子どもに『密着するのを避けて』といっても、限度がある。この状況で新たに0歳児をお預かりすることの不安は大きい」(世田谷区の認可保育園、三茶こだま保育園の石田雅一園長、取材時点)。マスクや消毒液なども、国や自治体からの支給があるとはいっても、潤沢とはいえない状態だ。「マスクを購入するために、保育の合間に職員をドラッグストアまわりに行かせたこともあった」(石田園長)。

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それでもし1人でも感染者が出れば、園を消毒し、原則2週間の休園をしなくてはならない。実際、職員や園児に感染者が出た品川区や千葉県市川市などの保育園は休園を迫られた。経済、社会を動かし続けるためのインフラの1つとして、1日でも長く保育園を開園し続けるために、保育負担を減らせる手段があるならば、最大限の柔軟な対応は急務だ。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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