東京の保育園「コロナ」で不安強まる現場の葛藤 23区は江東区以外で「育休延長」を緊急容認

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港区の場合は、「3月31日の時点で、4月入園内定者の約3割にあたる300人ほどから『入園を延期する』との申請があった」(同区・保育課長)。目黒区も「200人程度が申し込んだ」(同区・保育課)という。東京23区の場合、4月入園の多くが0歳児だ。4月1日に、山梨県でゼロ歳児が感染したことが判明したこともあり、ツイッターなどのSNS(交流サイト)上では急遽入園の延期を検討しはじめた、という投稿も相次いでいる。

港区の場合は、親が所属する企業が育休延長を認めた場合、自治体に書類を提出すれば入園資格を維持できる(記者撮影)

江東区は4月入園者の延期を認めていない

一方、23区の中で唯一、4月入園者の延期を認めていないのが江東区だ。4月からの入園が内定している家庭が、それを取りやめる場合は、内定の資格を失い、もう一度「保活」をやり直す必要がある。江東区で4月入園の内定を得ていた保護者からは、「入園を遅らせたいなら仕事を辞めろ、子どもを危険にさらせ、ということなのか」と批判の声が出ている。

江東区は、都内でも有数の保育園激戦区だ。待機児童の数こそ2019年4月時点で51人と少ないが、これは落選した家庭が、自治体が管轄しない認可外保育園や、親類などに預けるといった対応を取ることで、待機児童の数から除かれているからだ。2020年4月に認可保育園に入るための1次選考の落選率はおよそ4割にのぼっており、23区内で3番目に高い。

江東区は、通常なら内定を辞退する場合に入園の選考で考慮される保育の必要性の指数が2点減点されるところを、今回だけは減点をしないという臨時措置を取っている。かといって、もう1度選考に申し込んで、受かる保証はない。

江東区こども未来部保育課の担当者は、区の方針をこう説明する。

「入園の内定枠を確保したまま、感染がおさまるまで復職時期を延期したい、との保護者の声があることは十分承知しています。ただ、今年度も1次審査時で1000人規模のご家庭が認可保育園に入れず、1日でも早い入園を待っている。公平性の観点から考えて、ルールを変更することはできません」

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