国民性のいいところと悪いところは表裏一体だ--『日本辺境論』を書いた内田樹氏(神戸女学院大学文学部総合文化学科教授)に聞く
--この本のテーマは日本人の国民性。
日本人の国民性は明らかに存在する。それは、いいところと悪いところが裏表になっている。ダメなんだというところの裏返しにすべていいところがあり、すばらしいというところはまた裏側にすべて欠点がある。価値中立的なところから日本人の国民性はどういうものか、なぜこういう国民性格になったのか、冷静なアプローチで考えた。
--日本人自身が価値中立的に自分を判定できるのでしょうか。
どちらかというと、それがこの本のメインテーマかもしれない。自分自身が当の日本人であり、日本人的なメンタリティを濃厚に刻印されてしまっている。日本人である私が日本人のメンタリティを語るのは、バイアスがかかる。そのバイアスをどうやってある程度無効化していくのか。私の書き方をみてもらうしかないが、それがこの本で私のやりたかったことでもある。
つまり、完全インサイドにいて渦中に巻き込まれていながら、なおかつ客観的になることはできるかというのが、一つの大きな試みだった。それが、この本での私の野心。ほとんどの人はどこか自分自身をゲームから遠ざけて、鳥瞰的に日本人とはと見下ろすような書き方をするが、それはなるべくしたくない。自分も当事者、当事者でも状況は把握できるぞ、と示したかった。
--文章は「です、ます調」で書かれています。
普通の人がのみ込みにくい話を書くときは「です、ます」で書く。そうすれば、なんとか日常言語で語っている風になる。ただ、かなりややこしい抽象的な議論をしているので、それをなるべく噛み砕いてわかりやすいようにするというところに「力技」がいる。そこが書いているときは面白い。結構ドキドキする。