国民性のいいところと悪いところは表裏一体だ--『日本辺境論』を書いた内田樹氏(神戸女学院大学文学部総合文化学科教授)に聞く
「日本人とは何ものか」との問いに、「辺境の民」の武道精神をベースに真正面から答える。裏付けは自在でいつの間にか、日本人論に誘導される。ブログのアクセス数2000万超の書き手の「突拍子もない日本人自画像」が受けている。
--1年ぶりの書き下ろしです。
「コンピレーション本」は何冊もあったが、まっサラの書き下ろしは今年初めて。
とりあえずどんどん書く。どちらかというとおばさんタイプなので、フックするネタがあると、あるいはいままで一度も書いていないアイデアがあると、話はヨコにヨコにずれていってしまう。あとで読み直して、結局、はじめのほうで書いたものはほとんど捨ててしまった。この本には最後に書いた部分、上澄みのほうだけを使った。
--売れている理由は。
版元の営業努力はもちろんだが、とにかく日本人は日本人論が好き。刊行されてそれほど時間がたっていないので、いまは静かなものの、これからご批判を各方面から賜ると思う。罵倒の嵐がくる気がする。
--従来から反論や論争はしませんね。
人文系の論争は意味がない。自然科学では、次々と証拠を出して仮説が書き換わることはあるが、人文系の論争は最終的にはIQの高さと性格の悪さで勝負を決するところがある。途中からは完全に罵り合いになって、どのくらい相手を残酷にえぐれるかの勝負になってしまう。そんなところで勝負を決してもしょうがない。反論したい人は自分で日本人論をそれぞれお書きになればよろしい。そのほうが面白い。