「新型コロナ大恐慌は来ない」と断言できるか 雇用状況はこれから悪化、インフレリスクも
今回の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気の落ち込みに関しては、リーマンショックと比較する向きが多い。だが、ここまで世界的に感染拡大が深刻化してしまった以上、当時とは比較にならないほどの大きなものになることを想定しておくべきだ。
リーマンショックは基本的に金融市場における流動性の消失が要因であり、大きな危機ではあったが、簡単に言えば資金が枯渇した金融機関に融資をすれば危機を脱することができるという、処方箋もすでに出来上がっていたということができる。
しかし今回の危機は、メインストリート、実体経済を直撃したものだ。いくら補助金を支給し、減税や失業保険の給付の延長を行ったとしても、人々が会社に行って働き、レストランで食事をし、劇場で音楽や芝居を楽しむことができない状況が続くのなら、景気も元に戻ってこない。実体経済を直撃しているという点では、リーマンショックではなく1930年代の大恐慌と比べるべきとの声が高まっているが、あながち間違っていないように思われる。
4年間で米GDPは27%縮小、1933年は失業率25%超に
振り返ると、大恐慌時代の1929年から1933年の間に、アメリカの国内総生産(GDP)は27%縮小、1933年には失業率が25%を超えるまでに上昇した。
このとき、株価は直前の高値から90%近くも下落した。もっともこれは当時のフーバー政権が有効な政策を何一つ取らなかったことに大きな原因があるとされている。
さすがに、このような記録でしか見たことのないような暗黒の時代に戻ってしまうことも、これをきっかけに世界大戦に突入してしまうこともないだろう。当時とは経済を取り巻く環境も大きく変わっており、リモートワークなどのテクノロジーの発達の恩恵によって、経済活動が完全に止まってしまうことはないと思われる。
しかしながら、一時的にせよ「生産活動が大幅に落ち込む」という点では、大恐慌時代に決して引けを取らない状況に陥ることも十分にあり得ると、警戒感を強めておく必要はあるのではないか。
3月26日にアメリカ労働省が発表した失業保険新規申請件数は、328万3000件と、それまで20万件台の前半を中心に推移していたのから10倍以上に急増した。
もちろんこれは劇場やレストランの閉鎖などに伴う、一時的なものと判断することができる。だが、1週間の間に300万人を超える人々が一斉に失業したことの影響は、小さく見積もるべきではない。4月3日に発表される3月の雇用統計でも、非農業雇用数は前月から減少すると見られているが、調査対象となるのは3月の半ばまでであり、今回の急増分は反映されることはないはずだ。
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