東野幸治「人生も笑いも正解がないから面白い」 「マイナー芸人」たちの世にも愉快な人生劇場

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ただし、「上手に梱包し直せる人に出会えるか」もポイントだと指摘する。

「『水曜日のダウンタウン』のプロデューサーである藤井健太郎さんが、“メジャーじゃないけどおもろいやつ”を藤井さんのカラーで地上波で納品していますよね。才能のある演出家やディレクターが上手に梱包し直す、料理し直せるかどうかも大きいと思います。芸人たちがパイの取り合いをする中で、そういう人に見つけてもらえるか。あと、売れるために、どれくらい努力しているか――」

『この素晴らしき世界』の中でつづられている「宮川大助・花子」の項では、ダウンタウンファンの大勢の女子高生たちが、 大助・花子2人の努力によって、彼女たちが宮川大助・花子ファンにもなっていく様子が描かれている。「執念と愛に満ちたコンビ」、そう東野は呼び、「メジャーになるという覚悟や本気さも必要だと思いますよね」と続ける。

すべての芸人はまだ「旅の途中」

「終わってみないとわかんないですよ、こればっかりは。全部途中経過ですから。リットン調査団だって、旅の途中じゃないですけど、ゴールはまだ切っていないので、どうなるかわかりません。テレビ、ネット、ラジオや劇場……劇場も大きい劇場から小さい劇場まである。

テレビは泥舟になりかけていて、沈む船からネズミが逃げ出すように、芸人がYouTubeに進出してますけど、みんながYouTubeにいくんやったら、逆にテレビがおいしくなって、テレビに空きが出てくるなとも思うし。

『この素晴らしき世界』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

寄席芸人の時代が戦前、戦後にあって、次にラジオの文化がありました。芸人さんが寄席をおろそかにして、ラジオでネタをやって人気者になったら、劇場の先輩芸人が嫌味を言って。テレビが台頭したら、今度は『お前らテレビにばっかり出ていたら芸がおろそかになるぞ。舞台が命や』みたいなことを言う時代になった。

今は、それがYouTubeになっているだけ。意外と何にも変わってないというか。繰り返されてるだけやと思います。むしろ、出ていけるところはたくさんある。

それぞれに知恵を絞って頑張ってほしいと思う一方で、一切知恵を絞らずにずっと家にいてるやつは、それはそれで面白いし(笑)。だから、何が正解かわからないほうが面白いと思うんです。笑いは、人生は」

我妻 弘崇 フリーライター

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あづま ひろたか / Hirotaka Aduma

1980年北海道帯広市生まれ。東京都目黒区で育つ。日本大学文理学部国文学科在学中に、東京NSC5期生として芸人活動を開始する。2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経てフリーライターとなる。現在は、雑誌・WEB媒体等で幅広い執筆活動を展開している。著書に『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー ビジネス力を鍛える弾丸海外旅行のすすめ』(ともに星海社)など。

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