日本のロックダウンが腰砕けになりかねない訳

明確なルールがなければ応じない人を防げない

また、特措法に加えて、3月26日に感染症法の政令改正も行われ、指定感染症となっている新型コロナウイルス感染症においても、感染症法33条による交通制限・遮断を実施することができるようになった。

その結果、特措法ではなく、感染症法を適用して、72時間限定で交通制限・遮断を行うことができる。しかし、この条文から店舗の閉鎖や外出禁止を導くことは難しく、やはりロックダウンを行うに十分な規定とはいえないだろう。

国家緊急権とは

特措法が、禁止ではなく、「要請」「指示」といった曖昧な書きぶりとなっているのは、我が国において国家緊急権の発動が謙抑的であるためだ。「国家緊急権」とは「戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限」のことをいう。有事においては平時と同様の人権保障を行うことは現実的に困難であるのだから、一時的に憲法秩序を停止することをあらかじめ織り込んでおくことが、終局的には立憲主義、そしてそれに基づく人権保障の枠組みを守るために必要なのである。

緊急事態宣言は、まさに「国家緊急権」発動の最たる事例であり現在諸外国で行われているコロナウイルス対策のための措置も、国家緊急権に基づくものであるといえる。

戦前の大日本帝国憲法では、緊急勅令(8条)、戒厳の宣告(14条)、天皇の非常大権(31条)というように国家緊急権の発動が規定されていた。なお、非常大権については発動例がなかったものの、前2者については発動事例がある。

戦前の軍部の独走に対する反省のうえに成立した現行の平和主義憲法の下では、緊急事態法制の整備に政府が及び腰であった背景がある。諸外国の多くは、憲法上に緊急事態条項を規定しているが、日本の憲法において参議院の緊急集会など一部を除き緊急事態条項が規定されてこなかった。

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