日本のロックダウンが腰砕けになりかねない訳 明確なルールがなければ応じない人を防げない

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それでも冷戦終結と湾岸戦争、アメリカ同時多発テロ(9・11テロ)とその後のアフガン戦争・イラク戦争のような国際情勢の変化に伴い、日本でも武力攻撃事態法や重要影響事態法、国民保護法が成立し、自衛隊法や国家安全保障会議設置法の改正によって、外国からの武力攻撃に対応する法整備が進められてきた。また、相次ぐ台風や地震などの災害を受けて、自然災害や大規模事故に対しては災害対策基本法、災害救助法、原子力災害対策特別措置法、水防法などが整備されている。感染症に対しても、感染症法、検疫法、新型インフルエンザ等対策特別措置法などが整備されている。これらはいずれも緊急事態における国家緊急権の発動に関する条項を有した緊急事態法制なのである。

緊急事態における国家対応のあり方

新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けたロックダウンは、すでに欧米の先進国でも実施しているところであり、感染拡大を防ぐために有効かつ非代替的な手段であるといっていいだろう。そう考えれば、ロックダウンは、私権制限を含むものであったとしても、極めて限定された状況下で、相当の範囲で行われる限り、許容されるものであろう。

北海道知事は、国に先駆けて法的根拠もないまま学校の一斉休校や外出自粛の要請を出している。また安倍総理は、2月27日に、全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、3月2日から春休みまで臨時休校を行うよう要請したが、こちらもあくまで法的根拠なき要請である。

緊急事態において、国や自治体のトップがすべての責任を負う覚悟で決断すること自体は評価できるものの、法の裏付けがない以上どこまでいっても強制力がない。このまま感染拡大が続けば、政府が新型インフルエンザ等特措法に基づいて緊急事態宣言を出す蓋然性は日に日に高まっていくだろう。しかし、法改正をしないままだと、緊急事態宣言に基づく措置の内容が、これまで同様の自粛要請にすぎないものになりかねず、そうなると国民としてはどうすればよいのかわからず、かえって不安が増す結果となるおそれもある。

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