夫の策略で「強制入院3カ月」妻が味わった悪夢

精神疾患の既往歴なしの人が精神科病院に幽閉

抵抗する間もなく、両手、両肩を2人の男性看護師につかまれて、診察室から閉鎖病棟内の隔離室へと連れられた。隔離室内ではいきなり鎮静剤を注射されそうにもなった。「夫の診察に付き添ってきただけのはずが、なぜか私が入院、しかも隔離室に入れられたという現実が、当初まったく理解できませんでした」とAさん。医師からは入院の必要性もその形態の説明もなかったが、退院後にカルテの開示を受け、医師が押したハンコに書かれていた入院形態が「医療保護入院」だということがわかった。

Aさんのカルテ。本人への診察はごく短時間で、夫の言い分によって医療保護入院が決められた(記者撮影)

連載第2回「精神病院から出られない医療保護入院の深い闇」(2020年3月1日配信)で詳しく触れたとおり、医療保護入院は精神保健福祉法が定める精神科特有の強制入院の1つだ。家族など1人の同意に加え、同じく1人の精神保健指定医の診断があれば、本人が入院に同意しなくても強制入院させられる。ある人を入院させたいと考える側にとって極めて使い勝手がよい制度で、その件数は右肩上がりに増加を続けている。厚生労働省によれば、2018年度の医療保護入院の届け出数は18万7683件に至っている。

不仲の夫でも「同意権者」に

Aさんの医療保護入院に同意したのは夫だ。自らの強制入院の経験に加え、身内に精神科医のいる夫は、同制度を熟知していた。「夫とその親族が、離婚や息子の親権の取得を有利に進めるために、この制度を悪用したのではないか」とAさんはいぶかる。法律上、夫婦間が係争中の場合などには同意権限は認められないが、この2人のように夫婦仲が悪かっただけでは欠格事由には該当しない。離婚調停を申し立てている場合であっても同様だ。

私物の持ち込みが一切出来ず、布団と便器だけがある隔離室の中で、Aさんがひたすら不安に思っていたのが、引き離された生後9カ月の息子のことだ。「精神状態が悪化した夫のもとに子供を残して、本当に心配だった」。

女性は結局、3カ月後の退院時まで隔離室で過ごした。病院側は「攻撃性、多弁、多動、易刺激性(ささいなことで不機嫌になる性質)が認められた」ことなどを、その理由として挙げる。だがAさんは「必要性や理由が何ら説明されないまま、突然強制的に入院させられ、しかも隔離室に入れられたら、誰だって強く反発するに決まっています」と憤る。カルテなどによれば、診断名は入院中の3カ月間で、統合失調症、双極性障害、自閉症スペクトラム障害、広汎性発達障害などへと、たびたび変遷している。

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