香港と日本、コロナに引き裂かれた家族の現実 「日本のほうが安全だと思っていたのに…」

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2月頃まで、在港邦人の間では「香港にいるよりも、日本にいるほうが安全」と考える向きもあった。香港に夫を残し、妻子だけ日本に帰す家庭も多かった。春節明け早々に幼稚園や学校が休校になってしまい、子どもたちが時間を持て余してしまったことも理由の1つだ。日本に帰せば、実家に預けたり、幼稚園などに一時入園させたりといった対策がとれる。

さらに2月12日、外務省が香港を含む中国全土を対象に「早期の一時帰国や中国への渡航延期を至急ご検討ください」と警告するスポット情報を発表。この発表後、香港に滞在していた駐在員を一家庭ごと帰国させる企業が相次いだが、香港の企業で現地採用されていたり、自営業だったり、配偶者が外国籍だったりするとそういうわけにもいかない。

「帰国はさせるが入国制限なし」の怪

3月30日正午時点で、香港の新型肺炎の感染者数は641人、死者数は4人。一方の日本は1858人、死者数55人だ。単純に感染者数でいえば、マカオ(38人)や台湾(298人)、シンガポール(802人)などと同様に少ない(日経電子版「新型コロナウイルス感染世界マップ」)。これらの国々は香港同様に、早期から中国全土からの入国を禁じたり、入国できても14日間の強制検疫を適用したりするなどの措置をとっていた。

しかし日本はというと、早期帰国を促した2月12日の時点で入国制限の対象になっていたのは、中国の中では湖北省と浙江省のみ。

2月上旬に仕事で日本を訪れた香港人女性のリズさん(仮名)いわく、新宿や渋谷などの繁華街はマスクをしていない人たちであふれ、中国語もそこかしこから聞こえたという。

「アジア各国が厳戒態勢を取っているのに、入り口を開けっぱなしにするなんて。感染者が増えないほうが不思議」とあきれ顔だ。

しかし習近平国家主席の訪日延期が正式に発表され、韓国の感染者数増加が注目され始めた3月6日には一転、「新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の抜本的強化」を発表。

3月9日以降、香港・マカオを含む中国および韓国で発行されたビザの無効化や、中国および韓国からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所で14日間待機し、国内において公共交通機関を使用しないよう要請するなどの措置を取るとした。

この措置で大きな影響を受けたのは、出産を控えて日本に一時帰国していたレミー・佳子さん(仮名)だ。彼女の夫は南アジア出身で、香港のサービス業で働いている。香港内で発行された日本行きのビザも所持していたが、無効に。日本へ行くこと自体不可能になり、第1子の出産にも立ち会えなくなってしまった。

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