激変! 産廃ビジネス 大手を軸に大再編時代へ

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 「許認可業務では、5~7年前から準備に着手しなれば施設の整備が図れない。法規制の動向を読みながら投資を進めてきた」と三本守社長。91~92年の2年間に70億円の投資を行い、首都圏に3工場を立ち上げた。その後、05年、06年には合計135億円の巨額投資を行い、東京と川崎に新工場を建設した。

大規模リサイクル工場の実現には、効率的な廃棄物の集荷が欠かせない。建設リサイクル法改正を控え、さらなる品質・効率向上が求められている。2月27日、同社は第三者割当増資で東京海上日動から約20億円を調達、今後のM&A資金に充てていく方針を発表した。産業廃棄物を原料に再資源化・リサイクル化技術を持つ企業、廃棄物確保のために解体事業者、販路確保への商社などの企業買収、提携による規模拡大を目指している。

各国で進む寡占化 日本も再編加速が必要

すでに新たな連携も始まっている。07年9月には、廃石膏ボードリサイクル処理事業の共同持ち株会社を、大阪地盤の産廃処理大手・大栄環境、名古屋地盤のダイセキ環境ソリューション、石膏ボードメーカーの吉野石膏、さらに産廃排出元の大手建設会社などと設立した。今後、各地域に石膏ボードリサイクル施設を開設していく計画だ。

このほか、07年4月には工場廃液処理大手のダイセキ(東証1部上場)が使用済みバッテリーのリサイクルを手掛ける田村産業を子会社化するなど、M&Aによる事業拡大を狙う動きも活発だ。

典型的な中小零細企業の集合体だった産廃業界にも、売上高100億円超の第1グループ、10億円超の第2グループが形成されつつある。株式上場組は、最大手のダイセキ、その子会社のダイセキ環境ソリューション、タケエイなど5社。未上場では大栄環境グループ、市川環境エンジニアリングなど既存独立系のほか、大手メーカー等の子会社も増えている。ただし、売上高1000億円を超える規模の企業は日本ではまだ出ていない。

廃棄物は国際的に動き始めている。海外ではM&Aによる再編で、1兆円企業が誕生している。ドイツの産廃業者がEU全体を、米国ではウェイスト・マネジメント社が全米を支配している。元産廃Gメンの石渡氏は、「以前に比べ産廃業者の情報開示は進みつつある。現在は禁止されている再委託を解禁し、営業窓口機能を持つ企業を中心とするグループ化、規模拡大が望ましい」と、日本国内でも再編を加速させる必要性を訴える。10兆円といわれる日本の産廃処理市場だが、現状では年商10億円規模の業者が約1万社程度。再編の第1段階で100億円規模の会社が1000社に、第2段階で1000億円規模のグループ会社が100社に、という形で規模拡大と寡占化、経営効率化が進んでいくことを石渡氏は想定している。

業者間の競争は今後激しさを増すが、真の競争相手は不法投棄などの不適正処理。脆弱な経営基盤では財務の悪化が不適正処理につながりやすい。環境省の「産業廃棄物処理業者の優良性評価制度」では、処理業者の財務情報や許可内容、施設・処理の状況などが問われる。時代への適応にアクセルが踏まれている。
(週刊東洋経済:本多正典 撮影:梅谷秀司、谷川真紀子)

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