新型コロナの自粛モードを打ち破る3つの方法 日本マクドナルドの「再生人」足立光氏に聞く

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例えば、CRM(顧客情報管理)という個人情報のデータをもとにしたビジネスがありますが、もし法律などで個人データにアクセスできなくなってしまったら、その仕事は業界ごと終わるわけです。

実際、アマゾンもグーグルも、個人情報を取得してビジネスをしていません。よく「Gメールを使うと、グーグルに個人情報が筒抜けになっている」と言われますが、個人情報やCookie(クッキー)の規制等が強化された今、そういったことはまったくないのです。グーグルはあれだけ膨大な情報を持っているのに、個人にひも尽く情報を持っていないのです。

収入とキャリアの分散こそ、将来の安定につながる

ですから、今花形と言われる個人情報のデータに基づいたCRMなどのマーケティングを専門としている人たちは、5年後には仕事がない可能性が十分にあるわけです。

今花形の業界にいても、5年後には仕事がなくなるかもしれない。自分自身のマーケティングとして「次、何をやるの?」をつねに考え準備をしておきたい(撮影:今井康一)

今この瞬間は盛り上がっている業界なので、人気があるのも理解できますが、それがなくなるかもしれないことを頭に入れて、「次、何をやるの?」を常つねに考えて準備をしておくのが、自分自身のマーケティングのひとつだと思います。

これからの時代は、自分のキャリアを固定したものではなく、流動的に考えていかないといけない時代です。例えば「デジタルマーケティング」というのもマーケティングの一部でしかなく、そもそもメディア、ソーシャルなどデジタルという分野だけ見ても、とても広いのです。

『世界的優良企業の実例に学ぶ 「あなたの知らない」マーケティング大原則』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ですから、リアルも含めて全体を最適化していくのが、マーケティングの本質です。もちろん専門分野があるのはいいことですが、自分のキャリアと将来の可能性のためにほかのこともやったほうがいい。専門分野が1つの人よりも、4つある人のほうが将来的には圧倒的に有利です。

例えば、みなさんも個人で投資するときには、安全を考えて利回りを最大にするために、株式と国債、国内と海外、それにREIT(不動産投資信託)や金などと分散して、ポートフォリオを組みますよね? 

自分自身の収入やキャリアも同じように考えましょう。自分のキャリア(活躍できる分野)のオプションは広いほどいいし、またひとつの会社に頼ることなく複数から収入があったほうが、間違いなく安定にもつながりますし、選択の自由度が高まります。

今回の新型コロナウイルスはさまざまな事業、個人に多大な打撃を与えることは確実です。しかし、これをきっかけに、個々人が前向きに未来を模索していくことがとても大事なことではないでしょうか。 

伊藤 洋次 ジャーナリスト、編集者

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いとう ようじ / Yoji Ito

立教大学卒業。複数の出版社に勤務。雑誌、書籍の編集などを経て現職。Webサービスの企画、開発なども行っている。

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