関電をむしばんだ原発事業「共犯関係」の呪縛 報告書で判明した金品授受と見返りの実態

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この追徴課税分の補填は会社に損害を与える行為に等しいと見られ、「特別背任にあたる可能性が高い」と、コンプライアンスに詳しい郷原信郎弁護士(元長崎地検次席検事)は指摘する。

元役員が就任した相談役、エグゼクティブフェローの報酬について関電では、同社の人事・報酬等諮問委員会や取締役会に諮ることなく、岩根社長や八木会長の独断で決めていた。だが、第三者委から不適切な支出であると指摘されたことを受け、報酬の一部について関電は返還を求めていくという。

ちなみに関電では、東電の福島原発事故後の経営不振時に削減した役員報酬の一部についても、2015年に森詳介相談役(肩書きは当時)、八木社長の話し合いによって補填する方針を決定。2016年7月から2019年10月にかけて、元役員18人に対して総額約2億6000万円を支払った。この決定についても取締役会に付議されておらず、人事・報酬等諮問委員会にも諮られていない。

ウミを出し切ったとは言えない

第三者委員会から「共犯関係」とも指摘された森山氏とのつながりは長年にわたって関電をむしばみ、コンプライアンス欠如が常態化した。そして、コーポレートガバナンスの機能不全により、自らの手で解決することができなかった。そして今、長年にわたるツケの支払いを迫られている。

原発のコストなどエネルギー問題に詳しい大島堅一・龍谷大学教授は、「関電は原子力事業の運営を担う企業としての資質を欠いている。社内処分だけでは不十分で、電気事業法に基づく厳正な対処が必要だ」と指摘する。

関電では3月14日付けで社長交代を発表。会長については社外からの招聘を検討している。しかし、不正を見過ごした取締役や監査役の責任は追及されておらず、ウミを出し切ったとは言えない。コーポレートガバナンス立て直しの道のりは険しい。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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