関電をむしばんだ原発事業「共犯関係」の呪縛 報告書で判明した金品授受と見返りの実態
他方、豊松氏と森山氏の関係はどのようなものだったのだろうか。
豊松氏は、東京電力の福島原発事故の後、新規制基準の適合性審査に合格させた原発の再稼働を次々と実現。社内で絶大な存在感を誇示した。2019年6月に副社長を退任した後には、副社長待遇の「エグゼクティブフェロー」に就任。原発の安全性向上などを目的として設立された「原子力エネルギー協議会」(ATENA)のステアリング会議議長も務めるなど、まさしく「業界のドン」となっていた。
その豊松氏が森山氏の親密企業への便宜供与に深く関わってきたことは、第三者委員会が実施した社内電子メールなどを対象としたデジタル・フォレンジック調査から、その一端をうかがい知ることができる。
金品提供と工事発注の関連疑い
第三者委が入手した関電の社内文書によれば、塩浜工業(福井県敦賀市)をジョイントベンチャー工事の元請けにしてほしいとの森山氏からの会議での要求(2011年9月9日)に対して、当時、原子力事業本部長だった豊松氏らはいったんは断った後、「われわれでできる範囲は、下請けでできるだけ参画してもらえるようにすること」として受注できるように配慮するとの発言をしていた。
そのうえで、社内文書には「豊松本部長、白井本部長代理からの指示」として、「構内で、仮設でもいいから、何か塩浜に元請けで出せる工事がないかどうかチェックしておくこと」との記載があった(2011年9月12日付け)。
そのわずか3週後の2011年10月1日、森山氏から豊松氏に現金1000万円が塩浜工業の役員同席の下で渡されていると、第三者委の報告書は指摘している。こうした事実関係を踏まえて報告書は、「森山氏による金品提供と工事の発注要求との関連性が疑われる」と述べている。
後に巨額の脱税容疑で金沢国税局の税務調査を受けた吉田開発(高浜町)についても、「工事をもってこい」との森山氏から要求があったことが、高浜原発の所長から豊松氏宛てのメールで赤裸々につづられている。これを受けて関電は子会社の環境総合テクノスを通じて吉田開発に工事を約束。2978万円で発注されていた事実が認められたという。豊松氏がこうした発注を認識していた実態を、メールの内容からうかがい知ることができる。
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