関電をむしばんだ原発事業「共犯関係」の呪縛 報告書で判明した金品授受と見返りの実態

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報告書によれば、関電の原子力事業本部では2010年代に、度重なる森山氏からの便宜供与の要求に手を焼いていた実態もうかがえる。その際、担当者から本部長の豊松氏にも、森山氏の理不尽な要求に関しての報告が上がってきていた。

発注の「年間ノルマ」

例えば、2014年6月当時の高浜原発所長が作成した森山氏に関する引き継ぎ資料によれば、森山氏が相談役を務めていた柳田産業(兵庫県高砂市)への発注について、「年間ノルマ」があったという。

これについて第三者委報告書は、2003年頃から関電は森山氏との間で柳田産業に対する発注予定額について事前協議が行われており、その事前協議で合意された金額をその当該年度の発注予定額としていた事実が認められたと述べている。

そのうえで、発注予定額については高浜原発のみならず、関電の美浜原発、大飯原発の担当者とも必要に応じて共有され、原子力事業本部から各原発に対して発注額の未達がないようにする旨の指示が出されていた。そして特に未達が大きかった大飯原発については、柳田産業の幹部に対して案件を提案するようにとの連絡もされていた。

こうした事実を踏まえ、第三者委報告書では「年間ノルマ」とは柳田産業に対する発注予定額である可能性が高く、関電では柳田産業に対する発注予定額を、達成すべき「ノルマ」と解釈していたことがうかがわれると認定されている。

そればかりでなく、森山氏は柳田産業への発注金額を増やすように具体的な金額を提示して、原子力事業本部の森中郁雄・事業本部長代理、鈴木聡・副事業本部長(肩書きは2013年当時)に要求。2014年度の柳田産業への直接発注の金額は、森山氏が要求していた金額と近似していたとも第三者委報告書は述べている。

このように、森山氏は関電に対して執ように便宜供与を要求。それに関電の原子力事業本部の幹部が応えていたことがわかる。

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