BMW「初代Z4」今でも忘れられない痛快な魅力 同じ車を色違いで乗り換えた男の回顧録

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1台目は2年半、2台目は3年。合計5年半ほどZ4と過ごしたが、走りはもちろん、ファッション面でも満足度の高い日々だった。

2代目Z4は2009年のデビュー。その姿を知るまでは次期車候補のナンバー1だった。

2008年暮れに正式発表されたが、その時点で候補から落ちた。ルックスもいいし、Z4の後継に相応しい仕上がりという意見も多かった。が、僕にとっては「NO!」と言わざるをえない決定的なポイントがあった。

それは「リトラクタブル・ハードトップ」になったこと。あくまで僕の個人的価値観だが、ライトウェイト・スポーツは「ソフトトップであるべき」と思っていたからだ。いや、今でもずっとそう思っている。

リトラクタブル・ハードトップの採用で、2代目Z4のトップを閉めた時の居住性/快適性は大きくアップグレードされた。そのことを拍手で迎える人は間違いなく多かっただろう。

スペインで乗った印象では、ほぼすべての点で新型に軍配が上がった。内外装は1クラスも2クラスもランクアップしていた。問題の乗り心地やロードノイズも解決されていた。

走りは滑らかでしなやか。スポーツカーとしてのキビキビ感も失っていなかったし、追い込んだときの懐も深かった。冷静に点数を付ければ、初代Z4を大きく上回る高得点がつく。

でも、それでも、僕は初代Z4が好きだった。

愛してやまない初代Z4

粗さも伴ってはいたが、カートのような身のこなしは楽しかったし、なによりコンパクトなソフトトップが好きだった。

3代目のZ4は2018年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスで発表されたが、再び「ソフトトップ」に戻っていた。僕の主張がとおったようでうれしかった。

デザインテイストも初代の延長線上にある。が……そのサイズは、残念ながら、ライトウェイト・スポーツの領域を超えていた。

時代と共に「ライトウエイト・スポーツ」の概念も変わってゆく、これは致し方ないことかもしれない。でも、僕はこだわる。コンパクトで軽くて小粋で、ドライバーの意のままに自在な身のこなしを楽しませる……そんなライトウエイト・スポーツに僕はこだわる。

そんな意味では、現在のスポーツカーで「ライトウエイト」と胸を張っていえるのは「マツダ・ロードスター」だけ。

そんな貴重なスポーツカーが日本生まれであり、日本育ちであり、世界に多くのファンを持っていることが僕はうれしくてならない。

つい最近、しばらく会っていなかった友人が遊びに来た。なんと初代Z4に乗って。

素晴らしくコンディションのいいZ4で、僕も乗せてもらったが、初代Z4の魅力を再認識することになった。ライトウェイト・スポーツカーのおいしさを改めて確信した。

もし、「最新運転支援システムの後付」が可能にでもなったら、僕は初代Z4を買うだろう。楽しかったクルマ人生……その結びにも相応しい1台だと思うからだ。

(文:岡崎宏司/自動車ジャーナリスト)

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