高額訴訟は二審も敗訴、ユニクロは変わるか 名誉毀損2億2000万円請求裁判の顛末
だが、こうした主張は再度、全面的に退けられる結果に終わった。同判決に関して、親会社ファーストリテイリングの広報は「今後の対応は慎重に検討し決定する」と説明。判決後2週間内を期限とする最高裁への上告に関しては、現時点では未定としている。
近年、名誉毀損訴訟での損害賠償額は高額化傾向にある。中には数億円単位の請求を出版元だけではなく書き手個人にも行なう「スラップ(恫喝)訴訟」も出始めている。
消耗する著者
今回の件はあくまで出版元を相手としており、恫喝訴訟とは一線を画している。それでも、「訴訟準備で膨大な時間が取られて、ほかの仕事になかなか時間が割けなかった。また心理的なプレッシャーはものすごくあった」と、著者であるジャーナリストの横田増生氏は語る。
「同社関連の取材ファイルは7つ。うち3つは訴訟準備で作成したものだが、こうした新たな情報は一審判決が出るまでの2年強は、1行も書くことはできなかった。書きたい気持ちはあったが、特に自分が被告でない分余計、これ以上出版社に迷惑はかけられないと考えた。また裁判中はどこで揚げ足を取られるかわからないので、ブログやツイッターなどでの情報発信も積極的にはできなかった」(横田氏)。原告側の意向がどうあれ、高額な名誉毀損訴訟が書き手に消耗を強いる現実がある。
3月中旬、ファーストリテイリングは国内ユニクロ店舗(2013年11月末856店舗)で勤務する全パート・アルバイト約3万人の半数強に当たる1万6000人を正社員化する方針を打ち出した(関連記事「ユニクロ、"パート正社員化"へ2度目の挑戦」)。長期的な人材確保や生産性向上のための人事制度改革としている。同社の労働環境に関するメディアからの問題提起は、少なくとも改革の遠因とはいえるだろう。
2020年での売上高5兆円、世界一のアパレル企業を目標に掲げる同社には、外部からの批判を受け入れ、それを改善につなげる前向きな経営姿勢が期待される。
(撮影:尾形文繁)
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