ドイツのコロナ対応で強調される「連帯」の意味 メルケル首相「戦後これまでなかった事態」

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3月16日には連邦政府・各州政府との合意に基づき、公共部門の社会的接触を制限することが発表された。それにより、小売店、劇場、ミュージアム、スポーツ施設などは当面の間閉鎖される。

しかし食料品や、薬局、ガソリンスタンドなどは制限されない。飲食店も営業時間の短縮とともに、客の人数、テーブルの間隔距離の調整が必要だが開店。スーパーなどの食料品店などは逆に営業時間を拡大している。通常スーパーも含む小売店の営業時間は日本よりもかなり短い。開店時間を増やすことで、買い物客の分散を図るかたちだ。

客の人数を減らすため、カフェの席が間引かれている。しかし21日以降、飲食店は営業禁止になった(2020年3月20日筆者撮影、エアランゲン市)

具体的な措置は各州で行うが、例えばバイエルン州政府の場合、州内が災害状態にあることを宣言。州の規制法により医療分野を政府の管理下においた。

この宣言は極端な場合、集会の自由、移動の自由、個人宅への不可侵性の権利が制限されることや、当局が災害を防止するために資材や作業サービスなどの提供を要請することもありうる。

どういうことかといえば、アメリカ刑事映画を想像するとよい。身分証明書を見せるだけで刑事が一般市民の自動車やバイクを使うシーンがあるが、極端な話し、ああいうことができるわけだ。

じわじわと社会的な制限が増えていく

州の宣言は、あくまでもウイルス拡散を遅らせることが目的だ。この時点では、マルクス・ゼーダー州首相は外出制限を望んでいないと発言していたが、3月20日には当局の「より強力な介入がなければ、感染がさらに劇的に広がる」と述べた。

3月21日から翌月3日まで、日常必需品の買い物、単独・家族のみの散歩やスポーツなどは可能だが、大きな制限をかけた。これにより、すべての飲食店も閉鎖になった(持ち帰りは可能)。

連邦政府・州政府の大まかな動きは以上のようなものである。 幼稚園や学校も現在、イースター休暇が終わる4月19日まで休校だ。しかし、この措置が決定される以前から、必要に応じて各地域の学校では休校措置がとられていた。

また感染確率の高い国からドイツに戻ってきた人は自宅待機が要請された。特定の国への社員の出張を企業が禁じるケースもあった。このように、じわじわと社会的な制限が増えていくあたりは、「爆弾が落ちてこない戦争」の中にいるかのようだ。

一方、政府関係の決定とは別に、買いだめや企業のリモートワーク推奨増加など、日本と同じようなことも起こっている。この事態をドイツ社会はどのようにして乗り越えようとしているのだろうか。その1つのカギが「連帯」である。

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