香港の銀行、中国向け融資急増 不良債権化なら、業績に大きな打撃

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3月25日、香港の銀行の中国企業向け融資の残高はこの数年でほぼゼロから4300億ドルにまで膨らみ、わずかな不良債権化でも銀行の業績に甚大な影響を及ぼしかねない。写真は香港の東亜銀行。2008年9月撮影(2014年 ロイター)

[香港 25日 ロイター] -香港の銀行の中国企業向け融資の残高はこの数年でほぼゼロから4300億ドルにまで膨らみ、わずかな不良債権化でも銀行の業績に甚大な影響を及ぼしかねない。折しも投資家は中国の成長鈍化とデフォルト(債務不履行)発生に苛立ちを強めており、香港の銀行の本土向け融資をめぐる不安に拍車が掛かっている。

中国では今月初めに債券市場で初のデフォルトが発生。先週は浙江省の不動産開発会社、浙江興潤置業投資など企業の破綻が伝わり、過去最高水準に達した企業債務に不良債権化の兆しが表れつつあるとの懸念が浮き彫りになった。

BNPパリバ(シンガポール)の外為・金利戦略ヘッドのミルザ・ベイグ氏は「香港の銀行の中国企業向け融資はこれまで質が検証されたことがない。債権残高の急増の背後にこうした不安がある」と述べた。

国際決済銀行(BIS)のデータによると外国銀行の昨年の中国向け融資の残高は1兆ドルで、10年前のほぼゼロから大幅に増えた。アナリストの推計によると、香港からの融資が占める割合は最も高い。香港金融管理局(HKMA)によると、融資残高は4300億ドルと香港の域内総生産(GDP)の165%に相当する。

HKMAのデータも域内銀行の本土向け融資の増加ぶりを裏付ける。昨年末の融資残高総額のうち、中国向けは約40%。10年にはゼロだった。

金融センターとして香港とライバル関係にあるシンガポールでも中国向け融資は急増しているが、金融当局の統計によると融資残高のGDP比は15%どまりだ。

香港とシンガポールの銀行は、金融危機後の低い調達金利、企業の強い借り入れ意欲、中国の高い成長率などをてこに、他の外銀に代わって中国向け融資で中心的な役割を担うようになった。

ガベカル・ドラゴノミクス(香港)のストラテジスト、キャシー・ホルコム氏は、香港の銀行は人民元のオフショアとオンショアの金利裁定取引に群がったと指摘した。

為替エクスポージャー

香港の銀行の中国企業向け融資の内訳ははっきりしない。しかしムーディーズ・インベスターズ・サービスの金融機関担当マネジングディレクター、スティーブン・ロング氏は、かなりの部分が中国本土で事業を行っている香港の優良企業を対象とした貿易金融など、リスクの低い分野に回っているとみる。

しかし貿易金融は人民元高に賭ける投機資金流入の偽装に使われている可能性もある。また今年に入ってからの人民元安で借り手の返済能力が低下しているかもしれない。

欧州系銀行のバンカーは「こうした融資の大半は担保を設定していても為替が完全にはヘッジされておらず、為替変動で銀行側が巨額の損失を被りかねない」と話す。

またアナリストは、こうした融資のかなりの部分が中国の不動産・金融セクターのほか、鉄鋼など余剰生産能力を抱えて当局が融資を規制しようとしている分野に向かったとみている。

確かに香港の銀行の資本バッファーは国際的な基準を大きく上回っており、中銀に相当するHKMAはこれまでのところ中国向け融資について警告を発していない。

しかし投資家は警戒感を強めており、香港の金融株指数は年初から先週末までに13%以上も下落した。

アナリストによると、融資残高に占める中国向けの比率が最も高いのは東亜銀行<0023.HK>の46%と中国銀行(香港)<2388.HK>の27%。

金利上昇と不良債権増加のリスク

香港の銀行の不良債権比率は現在0.5%と過去最低水準にある。だがバークレイズの試算によると、不良債権比率が長期平均の3.5%に上がれば、4月から始まる年度の域内銀行の税引き前利益の見通しは現在の水準から20%近く切り下がる。

スタンダード・チャータード銀行やHSBCなど国際的に業務展開する大手はバランスシートが大きく、リスクは小さい。バークレイズによると、一方で東亜銀行は不良債権比率が3.5%に上昇するシナリオでは税引き前利益の10%が失われ、大新銀行<0440.HK>と永亨銀行<0302.HK>は6分の1が消し飛ぶという。

中国の不良政権比率は公式統計では1.0%だが、銀行筋は実際は5%ないし10%だとみている。

バークレイズの銀行アナリストのシャーニー・ウォン氏らは、欧米経済の回復などによって世界的に金利が上がり、不良債権比率は上昇すると見込んでいる。

つまり香港の銀行は債権絡みのリスクに備えて引当金の積み増しを迫られる見通しで、これらの銀行の不良債権比率や貸倒引当金を読み解くことが中国の信用市場の状態を探る手段になるということだ。

(Saikat Chatterjee記者)

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