超高齢化の島「網地島」はよみがえるか 震災で打撃を受けた離島で復興に向けた取り組みが進む

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「自分を育ててくれた島にもう一度元気を取り戻してほしい」と阿部さんは願う。そのためのプロジェクトが農業だ。「ジャガイモやサツマイモからスタートし、有機野菜も手掛けたい」と意気込む。

とはいえ、「島で農業」というのは、いかにも常識に反している。傾斜地が多く、大型機械も入りにくい。農業の大規模化という国の方針にもそぐわない。「島の住民からも半信半疑の目で見られている」と阿部さんは苦笑する。

その一方で、可能性を評価する声もある。

「島の皆さんからすると、新鮮で安価な地元産の農産物が手に入るのであれば、メリットは大きい。自給自足を目指す発想は魅力的だと思う」

事業の説明を受けた宮城県東部地方振興事務所の佐藤恵主事は、こう激励した。

1960年代には3000を超える人口を擁していた網地島だが、現在、実際に住む人は400人を割り込んでいるといわれる。住民の平均年齢は75歳前後、高齢化率(65歳以上の人口の割合)は85%に達する、全国でも類を見ない超高齢地域だ。20年ほど前に小学校や中学校が閉校となり、交番も空き家になった。

島ではかつては半農半漁の暮らしが営まれていたが、高齢化とともに休耕地が増加している。そして震災で島を離れる人がさらに増加した。

震災直後は、電気、水道のインフラが途絶したうえ、生活に必要な物資の確保も困難になった。自宅や仕事場、トラック、冷凍庫を津波で流されたため、石巻から島に生鮮食品を運んで販売してきた業者が来られなくなったからだ。

島の婦人会が青空復興市を開催

そうした中で、ライフラインとしての大役を務めているのが、震災3カ月後の2011年6月から現在まで、毎週水曜日午後に島内の公民館で「青空復興市」を開催している島の婦人会だ。

毎週水曜日の午後、長渡公民館で開催される青空復興市

青空復興市で取り扱うのは、野菜や肉、魚、インスタントラーメン、しょうゆなど約180品目。取りに来られない高齢者には、婦人会のメンバーが注文を集めたうえで、自宅まで届ける。その労力は並大抵のものではない。

網地島には婦人会の班が14班ある。その班長が毎週、住民からの注文を集めて婦人会長の小野寺たつえさん(70)に伝える。小野寺さんはそれらをまとめて土曜日に石巻の青果市場にFAXで注文する。

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